従業員50人未満のストレスチェックは誰が担当する?義務化に向けて必要な準備を解説
2026.09.17
「産業医がいない会社では、誰がストレスチェックを行えばよいの?」「人事担当者が質問票を配布して、結果を確認しても問題ない?」と悩んでいませんか。
労働者数50人未満の小規模事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務付けられます。ただし、ストレスチェックは、社内の人事担当者だけで完結できるものではありません。会社が実施方針を決め、医師や保健師などの有資格者を「実施者」として選任する必要があります。
この記事では、小規模事業場におけるストレスチェックの担当者や役割分担、外部へ委託する場合の注意点について解説します。
目次
小規模事業場にもストレスチェックが義務化される
ストレスチェックとは、労働者が自分のストレス状態に気づき、メンタルヘルス不調を予防することを目的として行う検査です。質問票への回答をもとに、仕事のストレス要因や心身のストレス反応、周囲からの支援などを確認します。高ストレスと判定された労働者が申し出た場合は、医師による面接指導を行い、必要に応じて勤務上の措置を検討します。
これまで、ストレスチェックの実施が義務付けられていたのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場でした。50人未満の事業場については努力義務とされていましたが、労働安全衛生法の改正により、2028年4月1日から実施が義務付けられます。
注意したいのは、人数を会社全体ではなく、「事業場」ごとに数えることです。
例えば、本社に30人、支店に20人が勤務しており、それぞれが独立した事業場として扱われる場合、いずれも50人未満の小規模事業場に該当します。会社全体で50人以上だからといって、それぞれの事業場が現在の義務化対象になるとは限りません。
2028年4月1日以降は、事業場の規模にかかわらず、原則として年1回のストレスチェックを実施する必要があります。
小規模事業場のストレスチェックは誰が担当する?
ストレスチェックは、一人の担当者だけで行うものではありません。事業者、実施者、実施事務従事者、面接指導を行う医師などが、それぞれの役割を担います。
事業者|実施体制を整える責任者
ストレスチェックの実施責任を負うのは、会社や個人事業主などの「事業者」です。
外部機関へストレスチェックを委託した場合でも、事業者としての責任がなくなるわけではありません。
事業者は、主に次の対応を行います。
・ストレスチェックの実施方針を決める
・実施者や実施事務従事者を選任する
・外部委託先を選定する
・実施時期や使用する質問票を決める
・従業員へ実施方法を周知する
・医師による面接指導を受けられる体制を整える
・集団分析の結果などを職場環境の改善に活用する
・個人情報を適切に管理する
小規模事業場では、経営者や人事担当者が外部機関との契約や連絡調整を担当することが多いでしょう。
ただし、事業者が従業員の回答内容や個人結果を自由に確認できるわけではありません。ストレスチェックの個人結果は、実施者から従業員本人へ直接通知されることが原則です。
実施者|結果を評価する有資格者
ストレスチェックの「実施者」は、質問票の選定や結果の評価、高ストレス者の選定などを行う専門職です。
実施者になれるのは、次の資格を持つ人です。
・医師
・保健師
・厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師
・厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師
・厚生労働大臣が定める研修を修了した精神保健福祉士
・厚生労働大臣が定める研修を修了した公認心理師
社内の人事担当者や経営者が、資格を持たないまま実施者になることはできません。
産業医を選任している事業場では、産業医が実施者を務めることがあります。一方、労働者数50人未満の事業場には、原則として産業医の選任義務がありません。
産業医がいない場合は、医師や保健師などの実施者を自社で確保するか、ストレスチェックを提供している健診機関や外部サービスへ委託する必要があります。
実施事務従事者|配布や連絡などの事務を担当する人
実施事務従事者とは、実施者の指示を受けて、ストレスチェックに関する事務を担当する人です。
例えば、次のような業務を行います。
・質問票の配布や回収
・Web回答用のIDやパスワードの発行
・未受検者への案内
・結果の発送
・面接指導の申出受付
・個人結果や記録の保存
人事・労務担当者が実施事務従事者になることは可能です。ただし、個人結果を取り扱う可能性があるため、誰でも担当できるわけではありません。
解雇や昇進、異動などについて直接的な権限を持つ人は、個人のストレスチェック結果を取り扱う実施事務に従事できません。従業員が人事上の影響を心配せずに受検できる体制を整える必要があるためです。
また、実施事務従事者には、業務上知り得た情報を外部へ漏らしてはならない守秘義務が課されており、違反した場合は刑事罰(罰則)の対象になります。
医師|高ストレス者への面接指導を行う人
ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定された従業員が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
面接指導では、医師が勤務状況や心理的な負担、心身の状態などを確認します。その上で、事業者は医師から意見を聴き、必要に応じて次のような措置を検討します。
・労働時間の短縮
・時間外労働の制限
・業務内容や業務量の変更
・配置転換
・深夜業の回数の削減
・医療機関への受診案内
面接指導を担当できるのは医師です。保健師や看護師、公認心理師などが、法令上の面接指導を医師に代わって行うことはできません。
人事担当者はストレスチェックの結果を見られる?
ストレスチェックの個人結果は、実施者から従業員本人へ直接通知されます。
従業員本人の同意がなければ、実施者や外部委託先から事業者へ個人結果を提供することはできません。そのため、人事担当者が当然に個人の点数や高ストレス者であるかどうかを確認できるわけではありません。
従業員から同意を得る場合も、ストレスチェックを受ける前や回答時に、結果提供への同意を求めることは認められていません。結果が本人へ通知され、本人が内容を確認した後に、個別に同意を得る必要があります。また、同意が得られた場合でも、閲覧できる人や利用目的を必要な範囲に限定することが大切です。
一方、高ストレス者が医師による面接指導を申し出た場合は、面接指導を実施するため、申出があったことを会社が把握します。ただし、面接指導を申し出たことや面接結果を理由に、解雇や降格、不利益な配置転換などを行ってはいけません。
従業員に安心して受検してもらうには、誰がどの情報を取り扱うのかを事前に説明しておく必要があります。
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もこすく相談所に問い合わせる小規模事業場では外部委託が推奨される
厚生労働省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」では、従業員のプライバシーを守る観点から、小規模事業場では原則として外部委託による実施が推奨されています。
従業員数が少ない職場では、回答内容や結果から本人を推測されることへの不安が生じやすくなります。経営者や人事担当者との距離が近いため、「結果を会社に知られるのではないか」と考え、正直に回答できない従業員もいるかもしれません。
外部機関へ委託すれば、社内の担当者が個人結果に触れずに、質問票の配布・回収、結果の評価、本人への通知などを行える体制を整えやすくなります。
ただし、外部機関であれば、どこへ依頼してもよいわけではありません。
ストレスチェックの外部委託先を選ぶ際は、次の項目を確認しましょう。
・実施者となる医師や保健師などが配置されているか
・質問票の配布から結果通知まで、どこまで対応するか
・高ストレス者の選定方法が明確になっているか
・医師による面接指導を依頼できるか
・個人情報の管理方法が明確になっているか
・個人結果を会社へ提供しない仕組みがあるか
・Webと紙のどちらに対応しているか
・外国語や障害のある従業員への対応が可能か
・集団分析に対応しているか
・料金に含まれるサービスの範囲が明確か
・緊急性の高い相談があった場合の対応方法が決まっているか
ストレスチェックの実施費用だけでなく、面接指導や集団分析、結果の保管などに別途費用がかかるかも確認する必要があります。
外部委託しても社内担当者は必要
ストレスチェックを外部へ委託しても、社内に担当者がまったく必要なくなるわけではありません。
社内担当者は、外部機関との連絡窓口として、主に次の業務を行います。
・外部委託先との契約や日程調整
・対象となる従業員の確認
・実施方法や相談先の社内周知
・受検しやすい時間や場所の確保
・面接指導を申し出る方法の案内
・集団分析結果を踏まえた職場環境改善の調整
・社内規程や情報管理ルールの整備
ただし、社内担当者へどの情報を共有するかは、あらかじめ外部機関と決めておきます。
個人結果を取り扱う担当者と、契約や社内周知だけを行う担当者を分ける方法もあります。社内担当者がどこまで関与するのかを明確にすることで、個人情報の漏えいや不適切な利用を防ぎやすくなります。
ストレスチェック実施までの流れ
小規模事業場がストレスチェックを実施する場合は、次のような流れで準備を進めます。
1.社内の実務担当者を決める
はじめに、外部機関との契約や連絡調整、従業員への周知などを担当する人を決めます。
経営者や人事担当者が担当する場合は、個人結果を取り扱う業務と、それ以外の事務を区別しておきましょう。
2.実施者または外部委託先を選ぶ
ストレスチェックの実施者となる医師や保健師などを確保します。社内で確保できない場合は、外部委託先を選定します。外部機関へは、サービス内容や料金、個人情報の取扱い、高ストレス者への対応などについて説明を求めましょう。
3.実施方法を決める
実施者や外部機関と相談し、次の内容を決めます。
・実施時期
・対象者
・使用する質問票
・紙またはWebなどの回答方法
・結果の通知方法
・記録の保存方法
・面接指導の申出方法
・集団分析の実施方法
・相談窓口や医療機関との連携方法
決定した内容は社内規程などにまとめ、従業員へ周知します。
4.ストレスチェックを実施する
従業員へ目的や個人情報の取扱いを説明した上で、ストレスチェックを実施します。
受検を強制したり、受検しないことを理由に不利益な取扱いをしたりしてはいけません。また、回答内容を上司が確認できる環境で実施することも避ける必要があります。
5.結果通知と面接指導を行う
実施者から従業員本人へ結果を通知します。
高ストレスと判定された従業員には、医師による面接指導を申し出られることを案内します。本人から申出があった場合は、事業者が医師の面接指導を手配します。
6.集団分析を職場改善に活かす
個人を特定できない形で結果を集計・分析すると、部署や職場ごとのストレス傾向を把握できます。
例えば、仕事量の負担が大きい、上司や同僚からの支援が少ないといった傾向が分かれば、業務分担や人員配置、管理職の関わり方などを見直すきっかけになります。
ただし、人数が少ない集団では、結果から個人を推測される可能性があります。個人を識別できない方法で分析し、結果を閲覧できる人や利用目的も決めておきましょう。
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もこすく相談所に問い合わせる小規模事業場が利用できる支援窓口
ストレスチェックの準備や実施方法に迷った場合は、公的な支援窓口を利用できます。
産業保健総合支援センターでは、ストレスチェックを含むメンタルヘルス対策について、専門スタッフによる相談対応や制度導入支援を行っています。
また、地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の小規模事業場を対象として、高ストレス者に対する医師の面接指導などの産業保健サービスを提供しています。
利用条件や申込方法、対応できる件数などは地域によって異なる場合があるため、事業場の所在地を担当する窓口へ確認しましょう。
小規模事業場では外部の専門職と連携して準備しよう
労働者数50人未満の小規模事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務付けられます。
実施責任を負うのは事業者ですが、ストレスチェックの結果を評価する実施者には、医師や保健師などの資格が必要です。社内の人事担当者は連絡調整や周知などを担当できますが、個人結果を自由に確認することはできません。
産業医や産業保健スタッフがいない小規模事業場では、外部機関へ委託する方法が現実的です。ただし、外部へ任せきりにするのではなく、社内担当者を決め、従業員への周知や面接指導、職場環境改善につなげる体制を整える必要があります。
もこすく相談所では、企業の状況に合わせたストレスチェックの実施支援や、保健師・看護師などによる外部相談窓口サービスを提供しています。
「産業医がいないため、実施方法が分からない」「義務化に向けて、何から準備すればよいか知りたい」とお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
参考:
厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」
厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」
この記事の要点
- 労働者数50人未満の事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックが義務付けられる。
- ストレスチェックの実施責任を負うのは事業者であり、医師や保健師などの有資格者を実施者として選任する。
- 人事担当者などは連絡調整や質問票の配布を担当できるが、個人結果の取扱いには制限がある。
- 高ストレス者への面接指導は、医師が行う。
- 産業医がいない小規模事業場では、原則として外部機関への委託が推奨されている。
ストレスチェックを
有効活用したい企業のご担当者様、
もこすく相談所にぜひお問い合わせください!
