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50人未満の事業場に産業医は必要?選任基準と健康管理のポイント

2026.08.25

50人未満の事業場に産業医は必要?選任基準と健康管理のポイント

「従業員が50人未満なら、産業医はいなくても問題ない?」「健康診断で異常を指摘された従業員には、誰が対応すればよいのだろう」と悩んでいませんか。

常時使用する労働者が50人未満の事業場には、産業医を選任する法的義務はありません。しかし、健康診断後の対応や長時間労働者への面接指導など、事業者に求められる健康管理まで不要になるわけではありません。

この記事では、産業医の選任が必要になる基準や、50人未満の事業場に求められる健康管理、嘱託産業医などを活用して体制を整える方法について解説します。

50人未満の事業場に産業医の選任義務はない

産業医は、医学的な立場から従業員の健康管理を支援する医師です。健康診断後の対応や長時間労働者への面接指導、職場巡視、健康相談、休職・復職に関する助言などを行います。

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、産業医の選任が義務付けられています。そのため、常時使用する労働者が50人未満であれば、原則として産業医を選任する法的義務はありません。

ただし、選任義務の有無を判断する際は、会社全体の従業員数や正社員数だけを確認すればよいわけではありません。次の3つのポイントを確認しましょう。

1.常時使用する労働者が50人以上か

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任しなければなりません。産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医を選任する必要があるため、従業員数が増えている事業場は早めの準備が必要です。

一方、常時使用する労働者が50人未満の事業場には、産業医の選任義務はありません。ただし、「50人未満なら従業員の健康管理をしなくてもよい」という意味ではないため、注意が必要です。

厚生労働省は、50人未満の事業場についても、労働者の健康管理などに必要な医学的知識を持つ医師などに、健康管理の全部または一部を行わせるよう努めることを示しています。

2.事業場単位で人数を数えているか

産業医の選任義務は、企業全体の従業員数ではなく、原則として事業場単位で判断します。事業場とは、本社や支店、工場、店舗、営業所など、一定の場所で組織的に業務を行う単位です。

例えば、会社全体では100人の従業員がいても、本社40人、支店30人、工場30人と独立した事業場に分かれている場合、それぞれが50人未満であれば、原則として産業医の選任義務はありません。

反対に、会社全体の従業員数が50人程度でも、一つの事業場で常時50人以上を使用していれば、その事業場では産業医の選任が必要です。

事業場に該当するかどうかは、場所が分かれているだけでなく、事業の組織・業務の実態等を踏まえて判断されます。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署へ確認しましょう。

3.パート・アルバイトなどを含めているか

産業医の選任義務を判断する際は、正社員だけでなく、継続して雇用しているパートやアルバイトなども労働者数に含めます。週の勤務日数や労働時間が短くても、常態として働いていれば算定の対象です。

例えば、正社員が45人、週1~2日勤務のパート従業員が10人いる事業場では、産業医の選任基準となる労働者数は55人となり、産業医の選任が必要になる可能性があります。

なお、健康診断の対象者の範囲を判断する基準は、産業医の選任における「常時使用する労働者」の判断とは異なります。そのため、産業医の選任基準となる労働者数とは一致しない場合があります。

産業医がいなくても事業者に求められる健康管理

産業医の選任義務がなくても、事業者には従業員が安全かつ健康に働ける環境を整える責任があります。

特に、健康診断後の対応や長時間労働者への面接指導は、事業場の規模にかかわらず必要です。産業医がいない場合に、誰へ相談し、どのように対応するのかを決めておきましょう。

健康診断の実施と事後措置

事業者は、常時使用する労働者に対し、雇入れ時や原則として1年以内ごとに1回、健康診断を実施しなければなりません。健康診断の実施義務は、事業場の規模にかかわらず適用されます。

健康診断を実施した後は、本人に結果を通知するだけでなく、異常の所見があると診断された従業員について、健康診断日から3か月以内に医師または歯科医師から意見を聴く必要があります。

この意見聴取では、通常どおり勤務できる「通常勤務」、勤務に一定の制限が必要な「就業制限」、勤務を休む必要がある「要休業」などの就業区分を確認します。そのため、健康診断結果に「要再検査」「要精密検査」などと記載されているだけでは、就業上の措置に関する意見を聴いたことにはなりません。

医師の意見を踏まえて必要と判断した場合は、労働時間の短縮や作業内容の変更、深夜業の回数の削減、休業などの措置を検討します。

産業医がいない事業場、特に常時50人未満の事業場では、地域産業保健センターを活用することもできます。

長時間労働者への面接指導

時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合、事業者は原則として医師による面接指導を行わなければなりません。この制度も、産業医の有無や事業場の規模を問わず適用されます。

事業者は、時間外・休日労働が月80時間を超えた従業員に対し、その時間数を通知する必要があります。面接指導の申し出がなかった場合でも、健康への影響が懸念されるときは、面接指導の実施を働きかけるなどの対応が重要です。

面接指導では、医師が勤務状況や疲労の蓄積、心身の状態などを確認します。事業者は面接指導後に医師の意見を聴き、必要に応じて労働時間の短縮や業務量の調整、配置転換などを行います。

産業医がいなければ、長時間労働が発生してから面接を依頼できる医師を探すことになり、対応が遅れる可能性があります。あらかじめ依頼先や社内の対応手順を決めておくことが大切です。

メンタルヘルス不調や休職者への対応

メンタルヘルス不調は、本人からの申し出だけでなく、遅刻や欠勤の増加、仕事上のミス、周囲とのトラブルなどをきっかけに把握することがあります。

不調が疑われる従業員がいる場合、人事・労務担当者だけで病気の有無や就業の可否を判断することはできません。本人の話を聞いたうえで、必要に応じて医療機関への受診をすすめ、医師の意見を確認します。

休職や復職の場面でも、主治医の診断書だけで判断することが難しい場合があります。主治医は治療の立場から判断しますが、実際の業務内容や勤務環境を詳しく把握しているとは限らないためです。

嘱託産業医などに相談できる体制があれば、本人の健康状態と仕事内容の両方を踏まえ、勤務時間の調整や業務上の配慮について助言を受けられます。また、保健師や看護師などによる相談窓口を設けることで、従業員が深刻な状態になる前に相談しやすくなります。

ストレスチェック義務化への準備

ストレスチェックは、従業員が自分のストレス状態に気づき、メンタルヘルス不調を予防するための制度です。これまでは50人未満の事業場では努力義務とされていましたが、労働安全衛生法の改正により、2028年4月1日から実施が義務化されます。

ストレスチェックは、質問票を配布して回答してもらうだけではありません。医師や保健師などの実施者を決め、個人情報を適切に管理し、高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合には、医師による面接指導につなげる体制が必要です。

義務化の直前になってから準備を始めると、実施者や面接指導を担当する医師の確保に時間がかかる可能性があります。まずは社内の担当者を決め、外部機関への委託を含めた実施方法を検討しておきましょう。

50人未満の事業場が健康管理体制を整える方法

50人未満の事業場では、必ずしも50人以上の事業場と同じ体制を整える必要はありません。地域産業保健センターや嘱託産業医、外部相談窓口にはそれぞれ異なる役割があります。

自社で必要としている支援や相談の頻度を整理し、無理なく続けられる方法を選びましょう。

地域産業保健センターを活用する

地域産業保健センターは、50人未満の小規模事業場とそこで働く従業員を対象に、産業保健サービスを原則無料で提供しています。

主な支援内容は、健康診断で異常の所見があった従業員に対する医師の意見聴取、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、健康相談などです。

産業医との契約が難しい事業場でも利用しやすい一方、事前の申し込みが必要で、地域や支援内容によって利用できる日時・回数などが異なります。また、一つの事業場を継続的に把握し、日常的な健康管理を担う顧問のようなサービスではありません。

まずは必要な対応について相談したい場合や、利用頻度がそれほど高くない場合に適した選択肢です。

嘱託産業医と契約する

50人未満の事業場でも、任意で嘱託産業医と契約できます。嘱託産業医とは、事業場に常勤するのではなく、契約内容に応じて定期的な訪問や面接指導、健康管理に関する助言などを行う産業医です。

常勤の専属産業医を雇用する場合と比べて、事業場が必要とする業務や訪問頻度に応じた契約を検討できるため、費用や人員面の負担を抑えながら専門的な支援を受けやすい点が特徴です。

健康診断後の意見聴取や長時間労働者への面接指導だけでなく、メンタルヘルス不調者への対応、休職・復職の判断、職場環境の改善などについて継続的に相談できます。事業場の業務内容や働き方を把握した医師から助言を受けられることもメリットです。

特に、次のような事業場は嘱託産業医との契約を検討するとよいでしょう。

● 健康診断後の意見聴取や就業上の措置が十分にできていない
● 長時間労働が発生することがある
● メンタルヘルス不調や休職者への対応に悩んでいる
● 従業員が増え、50人に近づいている
● ストレスチェックの義務化に向けて準備したい

ただし、嘱託産業医と契約すれば、健康管理をすべて任せられるわけではありません。面談の日程調整や必要な情報の提供、医師の意見を踏まえた就業上の措置などは、事業者が行う必要があります。契約前に、依頼できる業務や訪問頻度、緊急時の相談方法などを確認しましょう。

保健師や看護師などの外部相談窓口を活用する

従業員から日常的に寄せられる健康相談は、必ずしも医師による診察や面接指導が必要なものばかりではありません。「眠れない」「仕事と治療を両立できるか不安」「どの診療科を受診すればよいか分からない」といった相談もあります。

保健師や看護師などによる社外健康相談窓口を設ければ、従業員が会社の上司や人事担当者には話しにくい悩みも相談しやすくなります。相談内容に応じて医療機関の受診や産業医との面接につなげることで、心身の不調の早期発見にも役立ちます。

嘱託産業医が就業上の判断や職場への助言を担い、保健師や看護師が日常的な相談に対応するなど、それぞれの専門性を組み合わせる方法もあります。

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50人未満でも必要に応じて産業医を活用しよう

50人未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、従業員の健康を守るための対応は必要です。健康診断後の意見聴取や長時間労働者への面接指導などを確実に行えるよう、相談先と社内の対応手順を決めておきましょう。

もこすく相談所では、事業場の規模や課題に応じた嘱託産業医の派遣に加え、保健師や看護師などによる社外健康相談窓口を提供しています。「産業医と契約するべきか分からない」「自社に必要な体制を相談したい」という場合も、お気軽にお問い合わせください。

この記事の要点

  • 常時使用する労働者が50人未満の事業場には、産業医の選任義務はない。
  • 労働者数は会社全体ではなく、支店や営業所などの事業場単位で判断する。
  • 産業医がいなくても、健康診断や長時間労働者への面接指導などの対応は必要。
  • 2028年4月1日から、50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化される。
  • 継続的な健康管理が必要な場合は、嘱託産業医や外部相談窓口の活用も選択肢となる。

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