50人未満の小規模事業場でストレスチェックをどう進める?マニュアルをもとに対応のポイントを解説
2026.04.28
これまで常時50人以上の労働者を使用する事業場に義務付けられていたストレスチェックですが、今後は、50人未満の事業場にも対象が拡大される方向が示されており、厚生労働省からは小規模事業場向けの実施マニュアルも公表されています。
現時点ではまだ施行前であり、直ちに実施義務が生じているわけではありませんが、小規模事業場では「どのように運用するか」が課題になりやすいため、今のうちから準備を進めておくことが重要です。
この記事では、マニュアルの考え方をもとに、50人未満の事業場におけるストレスチェック対応について、「違い」「やり方」「役割」「注意点」の観点から整理します。
✔ 施行はまだ先だが、今のうちから準備を進めることが重要
✔ 小規模事業場では制度理解より運用設計が実務のポイントになる
✔ 実施は「方針→体制→実施→対応→改善」の流れで進める
✔ 役割分担と結果の閲覧制限など情報管理の整理が不可欠
目次
ストレスチェックはなぜ必要?小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の重要性
企業の規模に関わらず、労働者のメンタルヘルス不調に頭を抱えている企業は多いでしょう。労働者のメンタルヘルス不調が起きた時にどう対応すべきか、事後のフォローに目が行くことが多いですが、メンタルヘルスの問題こそ未然防止が重要です。ひとたびメンタルヘルス不調に陥ってしまうと、その病休期間は平均で約3ヶ月、復職後再び病休になる割合も約半数と言われています。特に小規模事業場にとっては大きな人材の損失となり、経営上のリスクにもつながってしまいます。
ストレスチェック制度をはじめとした職場のメンタルヘルス対策に取り組むことで、働きやすい職場の実現を通じて、生産性の向上や人材の確保・定着、企業価値の向上といった、持続的な経営につながります。特に人材不足が課題となっている小規模事業所において、そのメリットはとても大きいと考えられます。
50人未満のストレスチェックはいつから?
これまで50人未満の事業場では、ストレスチェック制度は努力義務とされてきましたが、制度の対象拡大が進められています。
施行時期は「2025年5月の公布から3年以内」とされており、現時点では準備期間にあたります。そのため、すぐに実施義務が発生するわけではありません。ただし、小規模事業場では制度開始後に体制を整えようとすると負担が大きくなりやすいため、あらかじめ運用方法を整理しておくことが大切です。
たとえば、2028年春ごろの完全義務化を見据えると、2027年度以前に一度試行的に実施し、運用上の課題を洗い出しておくことが理想的です。制度開始直前に初めて対応するのではなく、「一度回してみる」ことを前提に準備を進めると安心です。
50人未満のストレスチェックは何が違う?
ストレスチェック制度の目的自体は、50人以上の事業場と変わりません。労働者が自身のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと、さらに職場全体の課題を把握して改善につなげることが目的です。
一方で、実務面では違いがあります。
50人以上の事業場では、産業医の選任や衛生委員会の設置が義務付けられており、制度を運用するための前提が整っています。また、実施後には労働基準監督署への報告も必要です。
これに対して50人未満の事業場では、産業医がいない、衛生委員会がないといったケースも多く、制度運用の基盤が整っていないことが一般的です。そのため、ストレスチェック制度を導入する際には、「誰が担当するのか」「どのように実施するのか」といった点を一から設計する必要があります。
小規模事業場では制度理解だけでなく、自社で無理なく運用できる形を作れるかどうかが重要になります。
結局どうやる?小規模事業場のストレスチェックの進め方
小規模事業場におけるストレスチェックの実施は、次のような流れで進めます。
1.方針を決めて従業員に周知する
まず、事業者としてストレスチェック制度の目的や運用方針を明確にし、従業員に説明します。特に「結果は本人のみに通知されること」「不利益な取り扱いは行わないこと」を明確に伝えることが重要です。小規模事業場では経営者との距離が近いため、この点が曖昧だと受検率の低下につながる可能性があります。
2.実施体制と役割を整理する
制度を円滑に運用するためには、社内の担当者や外部委託先との役割分担をあらかじめ決めておく必要があります。誰が窓口となり、どこまで社内で対応し、どこから外部に任せるのかを明確にしておくことで、実施時の混乱を防ぐことができます。
3.実施方法を決める(外部委託の検討)
小規模事業場では、ストレスチェックをすべて自社で行うのは現実的に難しい場合が多く、外部機関への委託を前提に検討するケースが一般的です。委託先を選ぶ際には、結果通知の方法や高ストレス者対応のサポート内容、個人情報の管理体制などを確認しておくことが重要です。
4.ストレスチェックを実施する
質問票(紙またはWeb)を用いてストレスチェックを実施します。実施の流れ自体は50人以上の事業場と大きく変わりませんが、回答しやすい環境を整えることが重要です。
5.結果を本人に通知する
ストレスチェックの結果は、本人のみに通知されます。会社側が個別の結果を把握することは原則として想定されていないため、適切な情報管理体制を整えておく必要があります。
6.高ストレス者への対応を行う
高ストレスと判定された労働者が希望した場合には、医師による面接指導を実施します。小規模事業場では産業医がいないケースも多いため、あらかじめ面接指導を依頼できる医師や機関を確保しておくことが重要です。
7.集団分析と職場改善を行う
集団分析を通じて職場全体の傾向を把握し、必要に応じて環境改善につなげます。ただし、小規模事業場では無理に細かい単位で分析を行う必要はありません。
ストレスチェックの各役割:実施者・実施事務従事者・制度担当者・医師について
ストレスチェック制度では、いくつかの役割が関わります。それぞれの役割を適切に分けることが、制度を正しく運用するための重要なポイントです。
制度担当者
制度担当者は、ストレスチェック制度全体の運用を担う社内の窓口です。主に人事・総務・労務担当者が担うことが多く、実施スケジュールの管理や従業員への周知、外部委託先との連絡調整、高ストレス者対応の手配などを行います。
制度担当者は運用を管理する立場にありますが、個々のストレスチェック結果の内容に直接関与することは想定されていません。従業員が安心して制度を利用できるよう、結果の閲覧範囲や管理方法を明確に分けておくことが重要です。
実施者
実施者は、医師や保健師、一定の要件を満たした看護師などが担当します。実施者が、高ストレス者の選定や結果の評価を行います。
専門性が求められるため、小規模事業場では外部機関に委託するケースが一般的です。
実施事務従事者
実施事務従事者は、ストレスチェックの運用を支える事務的な業務を担当します。具体的には、受検案内の配布や回収の管理、未回答者へのリマインド、面接指導の日程調整などが挙げられます。
労働者数10人以上50人未満の事業場では、労働安全衛生規則第12条の2に基づき、衛生推進者又は安全衛生推進者を選定することとされています。実務担当者には、衛生推進者又は安全衛生推進者を選任することが望まれます。
なお、実施事務従事者は、立場上、個人のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱うことはできません。事務を行う際には、実施事務従事者がこうした情報を取り扱うことのないよう徹底し、個人情報保護への配慮する必要があります。
医師
医師は、高ストレス者に対する面接指導を担当します。面接指導の結果に基づいて、就業上の配慮に関する意見書の作成、職場改善の助言をすることもあります。
小規模事業場では産業医が選任されていないケースも多いため、外部の医療機関や専門サービスを通じて対応することが一般的です。
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もこすく相談所に問い合わせる集団分析はどう進める?小規模事業場での考え方
集団分析は、職場全体のストレス傾向を把握し、環境改善につなげるための重要な取り組みです。ただし、小規模事業場では人数が少ないため、分析の進め方には注意が必要です。部署単位や少人数のグループで分析を行うと、結果から個人が推測されてしまう可能性があります。
そのため、分析は無理に細かく分けず、必要に応じて全体で傾向を把握するなど、安全性を優先して実施することが重要です。
また、分析結果は出すことが目的ではなく、職場改善につなげることが目的です。業務量の調整やコミュニケーションの見直しなど、現場で実行可能な範囲から改善に取り組むことが現実的です。
50人未満の事業場で特に注意したいポイント
ストレスチェック制度を適切に運用するためには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。
不利益な取り扱いの禁止
ストレスチェックの結果は人事評価や配置判断の材料として使用するものではありません。こうした目的で利用すると、制度への信頼が損なわれる可能性があります。たとえば、本人の同意がないままストレスチェックの結果を理由に配置転換を行うことや、昇進・評価に影響させることは「不利益な取り扱い」に該当する可能性があります。業務上の配慮と不利益な取り扱いの線引きは曖昧になりやすいため、結果の活用範囲については事前にルールを定めておくことが重要です。
個人を特定されないための十分な配慮
小規模事業場では従業員数が限られているため、集団分析の結果や日常のやり取りから個人が推測されてしまう可能性があります。たとえば、5〜10人程度の部署単位で分析結果を共有した場合、「この結果は誰のことか」といった憶測が生まれることも考えられます。こうした状況は従業員の不信感につながり、正直な回答が得られなくなる原因にもなります。そのため、分析単位を一定人数以上にする、必要に応じて全体分析にとどめるなど、個人が特定されない形で運用することが重要です。
実効性のある制度設計
ストレスチェック制度は、実施すること自体が目的ではなく、職場環境の改善につなげることが本来の目的です。
集団分析を行うことも踏まえると、少なくとも集計・分析の単位となる集団については同時期に行うことが望まれます。また、毎年バラバラの時期だと比較しにくいため、実施後のフォロー(面談・改善)まで見据えてスケジュールを組むことが重要となります。
最低限ここだけ押さえればOK|法令対応チェックリスト
「どこまでやればよいのか分からない」という場合は、まずは以下を押さえておくと安心です。
基本事項
- ストレスチェックは年1回以上行う
- 実施者・実施事務従事者の選定を行う
- 上記の体制について従業員に通知する
- 個人結果は本人にのみ通知する
- 高ストレス者に面接指導の機会を提供する
小規模事業場で特に重要な対応
- 実施体制(担当者・委託先)を明確にし、周知する
- 結果の取り扱いを制限する(ハード面、ソフト面)
- 面接する医師へ提供する情報を確認する
小規模事業場におけるストレスチェックでよくある疑問Q&A
50人未満の事業場でストレスチェックの導入を検討する際、多くの企業で共通して出てくる疑問があります。ここでは、実務担当者や経営層が抱きやすいポイントを整理します。
Q. ストレスチェックの費用はどのくらいかかる?
外部委託を利用する場合、一般的には以下が目安となります。
- ストレスチェック実施費用:1人あたり数百円〜1,500円程度
- 集団分析:無料〜数万円程度(プランによる)
- 医師面接指導:1回あたり1〜3万円前後
小規模事業場では人数が少ないため、総額としては数万円〜十数万円程度に収まるケースが多いですが、面接指導の発生頻度によって変動します。
Q. 受検は強制できる?未受検者はどうする?
ストレスチェックは義務化されても、受検そのものは労働者の任意です。そのため、強制することはできませんが、受けやすい環境を整えることが重要です。
なお、制度として実施する以上、未受検者に対して常識の範囲内で受検のリマインドを行うこと自体は問題ありません。
Q. 高ストレス者が面接を希望しなかった場合は?
高ストレスと判定された労働者に対しては、面接指導の案内を行う必要がありますが、最終的に受けるかどうかは本人の判断です。本人が希望しなかった場合でも、適切に案内をしていれば、会社としての義務は果たしたと考えられます。
Q. 労基署への報告義務はある?
現行制度では、50人以上の事業場には報告義務がありますが、50人未満の事業場については、現時点では報告義務は前提となっていません。
ただし、今後の制度設計次第では変更される可能性もあるため、最新情報の確認は必要です。
Q. 「常時使用する労働者」はどこまで含む?
ストレスチェック制度における「常時使用する労働者」には、正社員、一定の条件を満たすパート、契約社員も含まれます。一般的には週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上が一つの目安になります。
Q. 外部委託はどこまで任せられる?
委託内容はサービスによって異なりますが、一般的には、実施、結果通知、集団分析、面接指導の手配までは対応可能なケースが多いです。また、オプションとして面接指導を担当する医師の手配や実施者代行サービスを提供している業者もあります。
一方で、対象者リストの管理、最終的な社内調整などは企業側で行う必要がありますが、一部サービスでは実施事務従事者の業務を部分的に代行していることがあります。
サービスによって差が大きいため、「どこまで任せられるか」は契約前に必ず確認することが重要です。
小規模事業場のストレスチェックでつまずきやすいポイントと対策
① 「会社が結果を見ているのでは?」という不信感で受検率が下がる
【よくある状況】
- 制度の説明が不十分なまま実施
- 社長や管理職が結果に関心を示す
- 実施事務従事者が社内の顔見知り
その結果、「どうせ会社に知られるのでは」と感じた従業員が、本音で回答しなかったり、受検を避けたりするケースが発生します。
【なぜ起きるか】
小規模事業場では人間関係が近いため、制度上の「匿名性」が心理的に信じられにくいという構造があります。
【対策】
- 結果は本人にしか開示されない仕組みを明確に説明する
- 実施者(外部機関)が結果を管理する体制にする
② 実施事務従事者に業務が集中し、運用が回らなくなる
【よくある状況】
- 担当者1名がすべてを兼務
- 紙で配布・回収・督促を実施
- 未回答者の管理や個別対応が負担になる
結果として、通常業務と両立できず、制度自体が形骸化してしまうことがあります。
【なぜ起きるか】
「50人未満だから簡単だろう」という前提で設計されることが多く、実務負担の見積もりが甘くなりがちです。
【対策】
- 最初からWeb実施を前提にする
- リマインド機能付きの外部サービスを利用する
- 担当者の業務範囲を限定し、役割を分散する
③ 高ストレス者対応の準備不足で現場が混乱する
【よくある状況】
- 面接指導の依頼先が決まっていない
- 誰が日程調整をするのか不明確
- 結果が出てから対応を考える
結果として、対応が遅れたり、制度への信頼が損なわれたりすることがあります。
【なぜ起きるか】
ストレスチェックは「実施」に意識が向きやすく、その後の対応設計が後回しになりがちです。
【対策】
- 実施前に医師の依頼先を確保する
- 面接までのフロー(案内→申出→調整)を決めておく
- 外部サービスで一括対応できる仕組みを検討する
④ 集団分析を細かくやりすぎて個人が特定される
【よくある状況】
- 部署単位(5〜10人)で分析
- 結果を管理職に共有
- 特定の人物を推測できる状況になる
これにより、従業員の不信感が高まり、次回以降の受検率低下につながることがあります。
【なぜ起きるか】
「分析は細かいほどよい」という誤解があり、小規模事業場の特性が考慮されていないためです。
【対策】
- 分析単位を一定人数以上に設定する
- 必要に応じて全体分析にとどめる
- 共有範囲を限定する
⑤ 紙運用を選択し、情報管理リスクが高まる
【よくある状況】
- 紙で配布・回収・保管
- 封筒の管理や誤送付のリスク
- 担当者が内容を見てしまう可能性
小規模事業場では人的ミスがそのまま重大なトラブルにつながりやすい傾向があります。
【なぜ起きるか】
コストを抑える目的や、従来の業務フローに合わせた結果として紙運用が選ばれるケースがあります。
【対策】
- Web完結型のサービスを選択する
- 個人情報に触れる機会を極力減らす
- ログ管理やアクセス制限がある仕組みを利用する
⑥ 「実施すること」が目的になり、改善につながらない
【よくある状況】
- 年1回の実施だけで終わる
- 集団分析結果が活用されない
- 現場へのフィードバックがない
制度としては実施していても、職場環境の改善につながらないケースです。
【なぜ起きるか】
制度対応を「義務」として捉え、活用まで考えられていないためです。
【対策】
- 分析結果から改善テーマを1つに絞る
- 小さな施策(業務配分見直しなど)から始める
- 結果を従業員にフィードバックする
まとめ:小規模事業場のストレスチェックは準備が重要
小規模事業場では、制度そのものよりも、運用の設計が大きなポイントになります。誰が担当するのか、どこまで外部に委託するのか、結果をどのように管理するのかといった点を整理しておくことで、無理のない制度運用につなげることができます。
最初の導入時には不明点などが多く、意外と準備に戸惑うことがあるかもしれません。直前になって焦ることがないよう、今から着実に準備を進めていきましょう。
もこすく相談所では、小規模事業場向けのストレスチェックサービスを提供しております。各企業様の実情に合わせて、実施からアフターフォローまで幅広く対応しておりますので、ぜひ一度お問い合わせください。
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有効活用したい企業のご担当者様、
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