ハラスメント相談を受けたらどうする?担当者が押さえたい初動対応のポイント
2026.07.31
「ハラスメントかもしれない相談を受けたが、まず何をすればよいのだろう」「相談者から『誰にも言わないでほしい』と言われ、対応に迷っている」と悩む担当者も多いのではないでしょうか。
ハラスメント相談では、初動対応を誤ると、その後の調査や相談者との信頼関係に影響を及ぼすおそれがあります。この記事では、相談を受けた直後から調査開始までに担当者が行うべき初動対応について解説します。
目次
相談を受けた直後に担当者が行う5つの対応
ハラスメント相談では、「何をするか」だけでなく、「どの順番で行うか」も重要です。ここでは、相談を受けてから調査を開始するまでの流れに沿って、担当者が行うべき対応を紹介します。
①相談者が安心して話せる環境を整える
相談を受けたら、まずは相談者が安心して話せる環境を整えましょう。
対面であれば、周囲に会話が聞こえない個室などへ移動し、十分な時間を確保します。途中で電話対応や別の予定を優先すると、「真剣に話を聞いてもらえていない」と受け取られる可能性があります。
また、「対応に必要な範囲で情報を共有する場合があるので、その場合には事前にご本人の了承を得ること」「できる限りプライバシーに配慮して対応すること」を最初に伝えておくと、相談者も安心して話しやすくなります。
メールやチャットで相談を受けた場合も、そのまま放置してはいけません。まずは相談を受け付けたことを返信し、「詳しく状況を伺いたいため、お時間をいただけますか」と伝え、面談やオンラインで話を聞く機会を設けましょう。
②最後まで話を聞き、事実を整理する
相談が始まったら、途中で話を遮らず、最後まで聞くことを心掛けます。この段階では、「それはハラスメントに当たります」「それは違うと思います」と判断する必要はありません。担当者が確認すべきなのは、評価ではなく事実です。
例えば、次の内容を整理しながら聞き取ります。
話を聞く際に、「相手にも事情があるのでは」「気にし過ぎではありませんか」「それくらいならよくあることです」といった発言は避けましょう。担当者にそのつもりがなくても、相談者は「信じてもらえなかった」と感じ、話しづらくなってしまいます。
③相談内容を客観的に記録する
相談内容は、その後の調査の基礎となる重要な情報です。相談者の了承を得たうえで、できるだけ具体的に記録しましょう。
記録する際は、担当者の感想や推測を書くのではなく、相談者が話した内容を客観的に残すことが大切です。特に、次の内容は忘れずに記録し、後から確認できるよう整理しておきます。
録音データやメール、チャット、写真などの証拠がある場合は、相談者の了承を得ながら適切に保全することも重要です。
④相談者の安全確保を最優先に考える
相談内容によっては、通常の調査よりも先に安全確保が必要になる場合があります。例えば、以下の状況では、調査を始める前に職場環境への配慮が必要になることがあります。
必要に応じて、人事部門や上司と連携し、一時的な座席変更や勤務場所の変更、業務上の接触を減らす対応などを検討します。また、体調不良が見られる場合には、産業医や保健師など産業保健スタッフへの相談を案内することも有効です。
⑤今後の対応の流れを説明する
相談をした後、「これからどうなるのか」が分からず、不安を感じる相談者は少なくありません。そのため、相談の最後には、次のことを説明しておきましょう。
一方で、「必ず処分します」「相手を異動させます」といった約束はできません。会社として判断するためには、相談者だけでなく、相手方や関係者からも話を聞き、公平に事実関係を確認する必要があるためです。
初動対応で担当者が守るべき3つの原則
相談対応では、何をするかだけでなく、どのような姿勢で対応するかも重要です。初動対応では、次の3つの原則を意識しましょう。
①結論を急がない
相談を受けた段階では、まだ事実関係は確認できていません。相談内容だけで「ハラスメントだ」と判断することも、「問題ない」と判断することも避ける必要があります。
担当者の役割は、その場で結論を出すことではなく、公平な調査につながるよう情報を整理することです。
②公平な立場を保つ
相談者に寄り添うことは大切ですが、相手方を加害者と決めつけてはいけません。一方で、「あの人ならそんなことはしない」という先入観も適切ではありません。
相談者、相手方、必要に応じて第三者からも話を聞き、客観的な事実を整理する姿勢が求められます。
③秘密保持を徹底する
相談内容は、調査や対応に必要な範囲を超えて共有してはいけません。「人事だから全員知っていて当然」「管理職にはすぐ伝えておこう」といった安易な情報共有は、相談者との信頼関係を損なうだけでなく、二次被害につながるおそれもあります。
情報共有は必要最小限にとどめ、記録や資料も適切に管理しましょう。
相談方法によって初動対応で注意したいポイント
ハラスメント相談は、対面での面談だけでなく、電話やメール、社内チャット、匿名通報窓口など、さまざまな方法で寄せられます。
相談方法が異なっても、「相談を受け止める」「事実を整理する」「適切な対応につなげる」という基本的な流れは変わりません。ただし、相談方法ごとに注意したいポイントがあります。
面談で相談を受けた場合
面談では、相談者が安心して話せる環境を整えることが何より重要です。周囲に話が聞こえない場所を用意し、十分な時間を確保しましょう。相談者の話を途中で遮らず、必要に応じて内容を確認しながら聞き取ります。
相談内容を記録する場合は、「後で内容を正確に確認できるように記録します」と一言伝えると、相談者も安心しやすくなります。
電話で相談を受けた場合
電話では相談者の表情が見えないため、相づちや確認を交えながら、落ち着いて話を聞くことが大切です。
一方で、電話だけでは状況を十分に把握できないケースもあります。内容が複雑な場合や証拠を確認する必要がある場合は、「詳しく状況を伺いたいため、改めてお時間をいただけますか」と案内し、面談やオンラインでの聞き取りにつなげることを検討しましょう。
メールやチャットで相談を受けた場合
メールやチャットは、相談者が心理的な負担を感じにくく、利用しやすい相談方法です。しかし、文章だけでは相談者の表情や緊急性が分からず、状況を正確に把握できないことがあります。
まずは相談を受け付けたことを返信し、「詳しい状況を確認したいため、お話を伺う機会をいただけますか」と連絡しましょう。
また、メールやチャットの内容そのものが証拠になることもあるため、削除や紛失がないよう適切に保管することも重要です。
匿名相談の場合
匿名相談では、追加の聞き取りができないことも多く、調査できる範囲に限界があります。しかし、「匿名だから対応できない」と判断するのは適切ではありません。
例えば、「特定の部署で同様の相談が複数寄せられている」「具体的な日時や場所が記載されている」といった場合には、職場環境の確認や関係資料の確認など、会社としてできる対応があります。
また、匿名相談が寄せられる背景には、「相談したことが知られるのではないか」「不利益な扱いを受けるのではないか」という不安がある場合もあります。匿名相談も、職場の課題を把握するための重要な情報として受け止めることが大切です。
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もこすく相談所に問い合わせる初動対応でやってはいけない対応
担当者に悪意がなくても、初動対応によっては相談者との信頼関係を損ねたり、調査に支障が生じたりすることがあります。
思い込みで判断する
「以前から問題のある人だから」「あの上司ならそんなことはしない」といった先入観は禁物です。
相談者の話だけで相手方を加害者と決めつけることも、反対に相談内容を軽視することも避けなければなりません。事実確認までは中立的な立場を保つことが重要です。
相手方へすぐ確認する
相談を受けた直後に相手方へ連絡すると、証拠の隠滅や口裏合わせ、相談者への報復などにつながるおそれがあります。
まずは相談内容を整理し、社内ルールに沿って調査の進め方を検討したうえで対応しましょう。
相談内容を必要以上に共有する
「管理職だから」「人事だから」という理由だけで情報を広げることは適切ではありません。
情報共有は、調査や対応に必要な範囲に限定することが原則です。また、共有する際にも、相談者のプライバシーに十分配慮し、記録の管理方法についても社内ルールを確認しておきましょう。
当事者だけで解決させようとする
「まずは二人で話し合ってください」と当事者同士で解決を促すことは避けるべきです。
ハラスメントでは、立場の差や心理的な負担から、相談者が自由に発言できない場合があります。会社として適切な手順で調査を進め、公平な対応を行うことが重要です。
ハラスメント問題の初動対応に関するよくある質問
初めてハラスメント相談を受けた担当者は、「この場合はどう対応すればよいのか」と迷う場面も少なくありません。ここでは、よくある質問を紹介します。
Q. 相談者から「誰にも言わないでください」と言われたら?
相談者から、「あなた以外には話さないでください」「上司にも知られたくありません」と言われることがあります。
相談者の気持ちに配慮することは大切ですが、調査や相談者の安全確保のためには、人事担当者や責任者など、対応に必要な範囲で情報を共有しなければならない場合があります。
そのため、「誰にも話しません」と約束することは避けましょう。「対応に必要な人以外へは共有しません」「できる限りプライバシーに配慮しながら対応します」と説明し、相談者の理解を得ることが大切です。
相談者が「それなら相談をやめます」と不安を示す場合もあります。その際は、誰に・どのような目的で情報を共有する可能性があるのかを具体的に説明し、相談者の理解を得ながら進めることが重要です。
Q. ハラスメント対応の社内ルールが整備されていない場合は?
社内ルールが十分に整備されていなくても、「ルールがないから対応できない」と相談を放置してはいけません。
まずは、相談者が安心して話せる環境を整え、相談内容を客観的に記録し、安全確保が必要かどうかを確認するなど、初動対応の基本を丁寧に行うことが重要です。
そのうえで、経営層や人事部門などと相談し、誰が調査を担当するのか、どの範囲まで情報を共有するのかを整理しましょう。
今回の相談をきっかけに、相談窓口や対応手順、情報共有のルールなどを見直し、社内体制を整備していくことも大切です。特に、相談窓口や相談後の報告ルート、情報共有の範囲、調査担当者などは、相談が発生してから決めるのではなく、あらかじめ整理しておくことが望ましいでしょう。
Q. 相談内容は誰に共有すればよい?
相談内容は、対応に必要な人だけで共有することが原則です。
「管理職だから」「人事だから」といった理由だけで共有範囲を広げると、相談者との信頼関係を損ねたり、職場で噂が広がったりするおそれがあります。
一方で、調査や相談者の安全確保のために、人事責任者や経営層、必要に応じて産業医や法務担当などとの連携が必要になるケースもあります。
誰に共有するか迷った場合は、社内ルールに従うことを基本とし、ルールがない場合は「対応に必要かどうか」を基準に判断するとよいでしょう。判断に迷う場合は、一人で判断せず、人事責任者やコンプライアンス担当など、相談対応を統括する立場の人へ相談して共有範囲を決めることも大切です。
Q. 相談者が調査を望まない場合は?
相談者の意思は尊重すべきですが、他の従業員にも被害が及ぶおそれがある場合などは、会社として対応を検討しなければならないケースもあります。
相談者の意向を丁寧に確認しながら、会社として対応が必要な理由を説明し、できる限り理解を得ながら進めることが重要です。
まとめ
ハラスメント相談の初動対応は、その後の調査だけでなく、相談者が安心して相談できる職場づくりにもつながります。
相談を受けた際に慌てず対応できるよう、日頃から相談体制や社内ルールを確認し、適切な初動対応ができる環境を整えておきましょう。
もこすく相談所では、保健師をはじめとする医療職による相談窓口の他、内部通報窓口といったサービスも提供しております。ハラスメント対策を考えている企業のご担当者様は、ぜひご相談ください。
この記事の要点
- ハラスメント相談を受けた際は、結論を急がず、相談者が安心して話せる環境を整えたうえで、事実関係を整理・記録することが初動対応の基本である。
- 相談者の安全確保を最優先に考え、必要に応じて人事部門や産業保健スタッフなどと連携しながら対応を進めることが重要である。
- 初動対応では、「結論を急がない」「公平な立場を保つ」「秘密保持を徹底する」という3つの原則を意識する必要がある。
- 面談・電話・メール・チャット・匿名相談など、相談方法に応じた適切な対応を行うことで、その後の調査を円滑に進めやすくなる。
- 思い込みによる判断や情報共有のし過ぎ、当事者同士だけで解決させることは避け、社内ルールに沿って組織として対応することが大切である。
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