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パワハラ防止法で企業に求められる対応とは?担当者向けにわかりやすく解説

2026.07.31

パワハラ防止法で企業に求められる対応とは?担当者向けにわかりやすく解説

「パワハラ防止法への対応が必要と聞いたものの、自社では具体的に何をすればよいのか分からない」「相談窓口を設置しただけで法令対応として十分なのだろうか」と悩んでいませんか。
現在は企業規模を問わず、すべての企業にパワーハラスメント防止措置が義務付けられています。対応が不十分な場合は、従業員とのトラブルだけでなく、行政指導や企業イメージの低下につながる可能性もあります。
この記事では、パワハラ防止法の概要や企業に義務付けられている措置、担当者が押さえておきたいポイントについて、法律に沿って分かりやすく解説します。

パワハラ防止法とは?

一般的に「パワハラ防止法」と呼ばれているのは、労働施策総合推進法の改正部分を指します。この法律では、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、事業主に対して相談体制の整備や迅速・適切な対応などの防止措置を講じることを義務付けています。パワーハラスメントは、従業員個人の問題ではなく、企業経営にも影響を及ぼす課題として社会的に認識されるようになりました。

たとえば、精神疾患による休職や離職、生産性の低下、人材確保への影響、企業イメージの低下など、ハラスメントが企業へ与える影響は決して小さくありません。一方で、以前は企業によって対応にばらつきがあり、「相談窓口がない」「相談しても適切な対応が行われない」といったケースも見られました。

このような状況を受け、企業が職場環境を整備し、ハラスメントを未然に防止することを目的として、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)が整備されました。2020年には大企業、2022年には中小企業にも防止措置が義務化され、現在はすべての企業が対象となっています。

なお、パワハラ防止法では、企業に対して「ハラスメントをゼロにすること」が求められているわけではありません。一方で、ハラスメントが起きにくい職場環境を整え、相談があった場合に適切に対応できる体制を構築することは企業の責務です。
そのため、人事・総務担当者は法律の内容を理解するだけでなく、自社の制度や運用が法令に沿ったものになっているかを定期的に確認することが重要です。

パワーハラスメントとは?法律上の定義を理解しよう

パワハラ防止法では、「職場におけるパワーハラスメント」に該当するかどうかを判断する基準が示されています。厚生労働省では、職場におけるパワーハラスメントを、次の3つの要件をすべて満たすものとしています。

● 優越的な関係を背景として行われること
● 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
● 労働者の就業環境が害されること

参考:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」

パワーハラスメントに該当するかどうかを判断する際の参考として、厚生労働省では代表的な行為を6つの類型に整理しています。
参考:厚生労働省「パワハラ6類型」

類型 主な内容
身体的な攻撃 殴る、蹴る、物を投げつけるなどの暴力行為
精神的な攻撃 暴言、侮辱、人格を否定する発言、必要以上の叱責など
人間関係からの切り離し 仲間外れ、隔離、業務から意図的に外すことなど
過大な要求 明らかに遂行が困難な業務を押し付けることなど
過小な要求 能力や経験とかけ離れた単純作業だけを与え続けることなど
個の侵害 私生活への過度な干渉や、本人が望まない私的情報の詮索など

ただし、この6類型はあくまでも代表例です。実際にパワーハラスメントに当たるかどうかは、6類型に当てはまるかだけで判断するものではありません。

行為が行われた経緯や目的、頻度、当事者同士の関係、職場の状況などを踏まえ、先ほどの3つの要件を満たしているかどうかを総合的に判断することが重要です。

パワハラ防止法で企業に義務付けられていること

パワハラ防止法では、企業に対して職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を講じることが義務付けられています。厚生労働省の指針では、事業主が実施すべき措置として、大きく4つの項目が示されています。

① パワーハラスメント防止方針を明確にし、周知・啓発する

企業は、パワーハラスメントを行ってはならないという方針を明確にし、従業員へ周知しなければなりません。たとえば、就業規則やハラスメント防止規程への明記、社内通知、研修などを通じて、パワーハラスメントの内容や禁止事項、懲戒の対象となることなどを周知します。

② 相談窓口を整備する

従業員が安心して相談できる窓口を設置し、利用方法を周知することも企業の義務です。相談方法や担当者を明確にするとともに、相談者のプライバシーが保護されることや、不利益な取扱いを受けないことについても周知する必要があります。

また、相談窓口は、相談者本人だけでなく、ハラスメントを目撃した従業員なども利用できる体制とすることが望ましいとされています。さらに、相談があった場合には、内容に応じて適切な担当者へ引き継げる体制を整えておくことも重要です。

③ 相談があった場合は適切に対応する

相談があった場合には、事実確認や関係者へのヒアリングなどを行い、迅速かつ適切に対応しなければなりません。また、相談者・行為者双方のプライバシーに配慮しながら、公平な対応を行うことが求められます。

④ 再発防止措置を講じる

パワーハラスメントが確認された場合には、行為者への対応だけでなく、再発防止に向けた措置も必要です。さらに、相談したことを理由とする不利益な取扱いを禁止し、安心して相談できる職場環境を維持することも企業の責務です。

これら4つの措置は、いずれか一つだけ実施すればよいものではありません。防止方針の周知から相談体制の整備、相談後の対応、再発防止までを一体的に進めることが法律上求められています。

パワハラ防止法違反となるのはどのような場合?対応を怠った場合のリスク

パワハラ防止法では、職場でパワーハラスメントが発生したことだけで、直ちに企業が法律違反になるわけではありません。一方で、企業が法律で求められる防止措置を講じていなかったり、相談があったにもかかわらず適切な対応を行わなかったりした場合には、事業主としての措置義務を十分に果たしていないと判断される可能性があります。

たとえば、次のようなケースでは注意が必要です。

対応が不十分な例 主な内容
防止方針を定めていない ハラスメント防止方針を策定・周知していない
相談窓口を整備していない 相談先がなく、利用方法も周知されていない
相談後の対応を行わない 事実確認や調査を実施せず、問題を放置している
再発防止を講じない 行為者への対応や職場環境の改善を行っていない
相談者へ不利益な取扱いをする 相談を理由に配置転換や降格などの不利益を与える

このような場合には、都道府県労働局から助言・指導・勧告を受けることがあります。正当な理由なく勧告に従わない場合には、企業名が公表される可能性もあります。また、ハラスメントへの対応が不十分であった結果、従業員へ損害が生じた場合には、民事上の損害賠償責任が問われるケースもあります。

さらに、パワーハラスメントが職場で放置されると、休職や離職の増加、生産性の低下、採用活動への悪影響、企業イメージの低下など、経営面にも大きな影響を及ぼしかねません。

パワハラ防止法への対応は、単に法令を守るためだけでなく、従業員が安心して働ける職場づくりや、企業の持続的な成長を支える取り組みとして捉えることが重要です。

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パワハラ防止法で企業が誤解しやすいポイント

ここからはパワハラ防止法に関連して、企業の担当者が誤解しやすいポイントを整理して紹介します。

中小企業は対象外?

いいえ。現在は企業規模を問わず、すべての企業がパワハラ防止法の対象です。

2020年6月に大企業で措置義務が始まり、2022年4月からは中小企業にも適用されました。そのため、「従業員が少ないから」「これまで問題が起きていないから」といった理由で対応を後回しにすることはできません。

実際には、従業員数が少ない企業ほど相談相手が限られ、問題が表面化しにくいケースもあります。企業規模にかかわらず、防止方針や相談体制など、法律で求められる措置を整備することが重要です。

相談窓口を設置すれば義務を果たせる?

いいえ。相談窓口を設置することは必要な措置の一つですが、それだけで法令対応が完了するわけではありません。

企業には、相談があった際に適切な調査や事実確認を行い、必要に応じて再発防止まで実施できる体制を整えることが求められています。また、従業員が「相談しても対応してもらえない」「相談内容が漏れてしまうのではないか」と感じていると、窓口は利用されません。

法律が求めているのは、窓口を設置することだけではなく、相談しやすく適切に機能する体制を整備することです。

社内でパワハラが発生したらパワハラ防止法違反になる?

いいえ。パワハラが発生しただけで直ちに企業が法律違反になるわけではありません。

問題となるのは、相談体制が整備されていない、相談後に調査を行わないなど、企業が必要な措置を講じていなかった場合です。

パートやアルバイト従業員は法律の対象外?

いいえ。パワハラ防止法の対象は正社員だけではありません。

契約社員やパート、アルバイトなど、雇用形態にかかわらず職場で働く労働者が対象となります。そのため、防止方針の周知や相談窓口の案内、教育なども、正社員だけでなくすべての従業員を対象に実施することが重要です。

特に非正規雇用の従業員は、立場上「相談しづらい」と感じるケースもあるため、相談しやすい環境づくりにも配慮が求められます。

2026年10月からはカスタマーハラスメント対策も義務化

2026年10月1日からは、改正法により企業へカスタマーハラスメント対策も義務付けられます。

これにより企業は、社内のパワーハラスメントだけでなく、顧客や取引先などによる著しい迷惑行為からも従業員を守るための体制整備が必要になります。

基本方針の策定や相談窓口の整備、相談への対応など、求められる措置にはパワハラ対策と共通する部分も多くあります。そのため、今後は個別の制度として整備するのではなく、職場全体のハラスメント対策として一体的に見直すことが重要です。

まとめ

パワハラ防止法では、企業に対して防止方針の策定・周知、相談窓口の整備、相談への適切な対応、再発防止措置などが義務付けられています。

また、2026年10月からはカスタマーハラスメント対策も義務化され、企業にはより幅広いハラスメント対策が求められるようになります。

まずは、自社の対応状況が法律で求められる内容を満たしているかを確認し、不足している部分から計画的に整備を進めることが大切です。

この記事の要点

  • パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)では、企業規模を問わずすべての企業にパワーハラスメント防止措置が義務付けられている。
  • パワーハラスメントは「3つの要件」を満たすかどうかで判断され、厚生労働省では代表例として6つの類型を示している。
  • 企業には、防止方針の周知、相談窓口の整備、相談への適切な対応、再発防止の4つの措置を一体的に実施することが求められている。
  • 対応を怠ると、行政指導や企業名公表の可能性に加え、損害賠償や人材流出、企業イメージの低下などにつながるおそれがある。
  • 2026年10月からはカスタマーハラスメント対策も義務化されるため、パワハラ対策とあわせてハラスメント対策全体を見直すことが重要。
           

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