ラインケアとは?管理職が知っておきたい役割と実践ポイント
2026.08.31
「部下の様子がいつもと違うとき、どこまで声をかければよいのだろう」「相談を受けても、どのように対応すればよいか分からない」と悩む管理職も多いのではないでしょうか。
ラインケアとは、管理職が部下の変化に気づいて相談に対応するとともに、職場環境の改善や職場復帰の支援などを行う取り組みです。ただし、管理職が病気を判断したり、一人で問題を解決したりするものではありません。
この記事では、ラインケアの意味や管理職の役割、部下への具体的な対応手順、会社に求められる体制づくりについて解説します。
目次
ラインケアとは管理職が行うメンタルヘルス対策
ラインケアとは、部長や課長などの管理監督者が、部下のメンタルヘルスを支える取り組みです。正式には「ラインによるケア」と呼ばれます。
厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、職場のメンタルヘルス対策を次の「4つのケア」に分けています。
これらは、どれか一つだけを実施すればよいものではありません。それぞれを組み合わせ、継続的かつ計画的に取り組むことが重要です。
管理職は、日頃の働き方や職場での様子を把握しやすい立場にあります。そのため、部下の変化に気づき、必要な支援へつなぐ役割を担います。また、業務量や労働時間、人間関係などを見直し、従業員が不調に陥りにくい環境をつくることもラインケアの一部です。
ただし、管理職は医師やカウンセラーではありません。部下の病名を判断したり、悩みをすべて解決したりすることが役割ではなく、必要に応じて人事労務担当者や産業医、保健師、外部相談窓口などにつなぐことが求められます。
ラインケアにおける管理職の4つの役割
厚生労働省の資料では、ラインケアの具体的な内容として、部下の変化への気づきや相談対応、職場復帰支援、職場環境の改善などが示されています。
ここでは、ラインケアにおいて管理職が担う役割を4つに分けて解説します。
1.「いつもと違う」部下に気づいて対応する
ラインケアでは、管理職が部下の「いつもと違う」様子に早く気づくことが重要です。そのためには、日頃から部下に関心を持ち、普段の働き方や行動を把握しておく必要があります。
厚生労働省は、「いつもと違う」部下の様子として、次のような例を挙げています。
これらの変化が見られたからといって、すぐにメンタルヘルス不調と判断できるわけではありません。大切なのは、ほかの従業員と比べるのではなく、その人自身の普段の様子と比べることです。
変化に気づいた場合は、勤務態度の問題と決めつけず、本人に声をかけて話を聴きます。健康上の問題が疑われるときは、管理職が病気の有無を判断せず、産業医や保健師などの専門職につなぎましょう。
2.部下からの相談に対応する
管理職には、部下からの自発的な相談に日常的に対応する役割があります。そのためには、部下が声をかけやすく、相談しても不利益を受けないと思える環境や関係をつくることが大切です。
特に、長時間労働が続いている部下や、事故、クレーム、ハラスメントなど強い心理的負担を伴う出来事を経験した部下には、管理職から声をかける必要があります。
相談を受けたときは、途中で話を遮らず、本人の話を丁寧に聴きます。「考えすぎではないか」「もっと大変な人もいる」「気持ちを切り替えれば大丈夫」などの言葉は、本人が悩みを否定されたと感じる可能性があります。
また、すぐに解決策を提示するのではなく、「今、一番困っていることは何ですか」「会社に配慮してほしいことはありますか」などと確認し、状況を整理しましょう。
管理職だけでは対応できない内容や、健康上の問題が疑われる場合は、本人の意向にも配慮しながら、人事労務担当者や産業保健スタッフ、外部相談窓口などへつなぎます。
3.休業した部下の職場復帰を支援する
メンタルヘルス不調で休業した従業員が復職する際は、休業前と同じ質や量の仕事をすぐに求めるのではなく、健康状態に応じた配慮が必要です。
復職の可否や就業上の配慮は、主治医や産業医などの意見を確認したうえで、会社が判断します。管理職が本人の見た目や自分の経験だけで判断することは避けましょう。
復職が決まった後は、人事労務担当者や産業保健スタッフと連携し、勤務時間や業務量、仕事内容、残業の可否、通院への配慮などを確認します。また、復職する本人と相談し、業務上必要な範囲で周囲の従業員にも対応方法を伝えます。
ただし、本人の同意なく病名や治療内容などを周囲に伝えてはいけません。周囲への説明は、「当面は残業を行わない」「一部の業務を調整する」など、業務上必要な情報にとどめることが大切です。
復職後も、本人の希望や医師の意見を踏まえながら定期的に面談し、業務負担や体調の変化を確認します。復職支援は、職場へ戻った時点で終わりではなく、無理なく就業を続けられる状態を目指す取り組みです。
4.職場環境を把握して改善する
ラインケアでは、不調が見られる部下への個別対応だけでなく、ストレスの原因となる職場環境を把握し、改善することも管理職の役割です。
従業員の心の健康には、次のような職場環境が影響します。
管理職は、日頃の職場管理や部下との面談などを通じて、業務の偏りや長時間労働、コミュニケーション上の問題などを把握します。ストレスチェックの集団分析を実施している場合は、その結果も職場環境の把握に活用できます。
問題点を把握した後は、業務量の調整や作業方法の見直し、情報共有の改善などに取り組みます。管理職の権限だけでは解決できない問題は、上位の管理職や人事労務担当者、産業保健スタッフなどと共有し、組織として対応しましょう。
管理職がラインケアを実践する5つの手順
部下の変化に気づいても、声のかけ方や相談後の対応が決まっていなければ、適切な支援につなげられないことがあります。
ここでは、変化に気づいてから、その後の様子を確認するまでの基本的な手順を紹介します。
1.具体的な変化を確認する
まずは、遅刻が増えた、ミスが続いている、残業時間が増えたなど、管理職が気づいた具体的な変化を整理します。
本人の性格や意欲を評価するのではなく、勤怠や業務上の行動など、確認できる事実に注目しましょう。また、一度の変化だけで判断せず、いつから、どの程度続いているのかも確認します。
2.落ち着いて話せる場所で声をかける
ほかの従業員がいる場所では、本人が話しにくい可能性があります。周囲に会話を聞かれない場所と、落ち着いて話せる時間を確保しましょう。
声をかける際は、「最近、様子がおかしい」などの曖昧な表現ではなく、気づいた事実と心配していることを伝えます。
例えば、「最近、遅くまで残っている日が続いていますが、仕事で困っていることはありませんか」「ここ数日、体調がつらそうに見えるので心配しています」などの伝え方があります。
3.否定や安易な励ましをせずに話を聴く
部下が話し始めたら、途中で遮らず、まずは本人の話を聴きます。相談内容を否定したり、管理職自身の経験を基準に評価したりすることは避けましょう。
本人がその場で話したくない場合は、無理に聞き出す必要はありません。「必要なときは相談してほしい」と伝え、改めて声をかける機会を設けます。
一方、本人が「消えてしまいたい」など自傷や自殺をほのめかしている場合は、本人だけに対応を任せず、速やかに産業保健スタッフや医療機関などへつなぐ必要があります。
4.必要に応じて専門職や相談窓口につなぐ
管理職は、部下の病名や治療の必要性を判断できません。健康上の問題が疑われる場合は、産業医や保健師、医療機関などの専門職へつなぎます。
部下から「誰にも言わないでほしい」と言われても、管理職だけで対応できない問題まで秘密にすると、必要な支援が遅れるおそれがあります。
どの情報を、何のために、誰と共有する必要があるのかを本人に説明し、対応に必要な範囲で共有しましょう。ただし、本人の健康情報を必要以上に周囲へ伝えてはいけません。
5.業務上の配慮とその後の様子を確認する
専門職へつないだ後も、管理職の役割が終わるわけではありません。医師や人事労務担当者などの意見を踏まえ、業務量や労働時間、担当業務などを調整します。
配慮を始めた後は、本人の状態や業務への影響を定期的に確認し、必要に応じて対応を見直しましょう。
また、一人の部下への配慮によって、ほかの従業員へ業務が集中する可能性もあります。チーム全体の業務量を確認しながら、継続できる方法を検討することが大切です。
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もこすく相談所に問い合わせるラインケアを管理職だけに任せないための体制づくり
ラインケアは管理職が行う取り組みですが、個人の経験や判断だけに任せるものではありません。会社が対応方法を決め、管理職を支える体制を整える必要があります。
1.管理職向けの研修を実施する
管理職向け研修では、メンタルヘルスの基礎知識だけでなく、部下の変化への気づき方や話の聴き方、相談後の対応、専門職へつなぐ基準などを扱います。
実際の相談場面を想定した事例検討やロールプレイを取り入れると、具体的な対応を学びやすくなります。新たに管理職になった人への研修だけで終わらせず、定期的に振り返る機会を設けましょう。
2.相談後の連携手順を決める
部下から相談を受けた後に、誰へ報告し、どのような手順で専門職につなぐのかを決めておく必要があります。
健康問題が疑われる場合、ハラスメントが関係する場合、緊急性が高い場合など、状況ごとの相談先を明確にしておきましょう。相談内容の記録方法や保管方法についても、社内でルールを定めます。
3.社内外の相談先を確保する
部下が必ずしも直属の上司に相談できるとは限りません。また、管理職自身が部下への対応や職場運営に悩むこともあります。
人事労務担当者や産業医などの社内相談先に加え、保健師や看護師などによる社外相談窓口を設けることで、従業員と管理職の双方が相談できる選択肢を増やせます。
相談窓口は設置するだけでなく、相談方法や受付時間、プライバシーの取り扱いなどを継続的に周知することも必要です。
4.個人情報の取り扱いを明確にする
メンタルヘルスに関する情報は、従業員の健康情報を含む個人情報です。誰がどの情報を取り扱うのか、どのような場合に共有するのかをあらかじめ定めておきましょう。
相談したことを理由に不利益な扱いを受けるのではないかと不安を感じると、従業員は相談をためらってしまいます。情報は健康確保や必要な就業上の配慮を行う目的で使用し、必要な範囲を超えて共有しないことが大切です。
また、管理職自身もセルフケアの対象です。部下への対応を一人で抱え込むと、管理職本人が疲弊する可能性があります。対応に迷ったときに、管理職も産業保健スタッフや外部相談窓口へ相談できる体制を整えましょう。
ラインケアは管理職と専門職の連携が重要
ラインケアでは、部下の変化に気づき、話を聴き、必要な支援へつなげることが管理職に求められます。ただし、管理職だけですべての問題を解決する必要はありません。人事労務担当者や産業医、保健師などと連携できる体制を整えておくことが大切です。
もこすく相談所では、保健師や看護師、助産師、産業医などによる社外健康相談窓口を提供しています。従業員だけでなく、部下への対応に悩む管理職からの相談にも対応可能です。ラインケアを支える相談体制を整えたい企業様は、お気軽にお問い合わせください。
参考:
この記事の要点
- ラインケアとは、管理職が行う職場のメンタルヘルス対策である。
- 管理職には、部下の変化への気づき、相談対応、職場復帰支援、職場環境の改善という役割がある。
- 部下の普段の様子と比べて「いつもと違う」変化に気づくことが早期対応につながる。
- 管理職が病気の有無を判断せず、必要に応じて産業医や保健師などの専門職につなぐことが重要である。
- ラインケアを機能させるには、管理職向け研修や相談後の連携手順、社内外の相談窓口などを整える必要がある。
