第4回「小さな違和感と、言葉になる前のサイン」
2026.08.25
企業の健康管理室にいると、「具合が悪いです」とはっきり言葉にされる前の、ちょっとした変化に出会うことがよくあります。
むしろ、そうした小さなサインのほうが、あとから振り返ると大切だったと思うことも少なくありません。
例えば、いつもは明るく挨拶をしてくれる人が、少しだけ目を合わせる時間が短くなったとき。
健診結果について話すときに、普段よりも言葉数が減っているとき。
あるいは、以前は自然に出ていた生活の話が、その日はほとんど聞かれなかったとき。
どれも、はっきりとした不調ではないけれど、「いつも」とのわずかな違いとして目に留まります。
一方で、言葉や態度だけでは気づきにくいサインもあります。
そのひとつが、面談の中にふと生まれる「間」です。
いつもと何かが違う・・・のサインは言葉や態度だけではない
ある方に「最近、体調はいかがですか」と尋ねたとき、すぐに「大丈夫です」と返事が返ってきました。
声も落ち着いていて、不自然なところはありませんでした。
ただ、そのあとにほんの少し、会話が途切れる時間がありました。
次の話題に進んでもいいくらいの、わずかな沈黙。
その方はすぐに話し出すわけでもなく、何かを探すように一瞬視線を落としていました。
しばらくして、「あえて言うなら、少し寝つきが悪い日があります」と付け加えられました。
最初の「大丈夫です」とは矛盾しないけれど、そこにたどり着くまでに必要だった、ほんの数秒の静けさ。
その“間”があったからこそ出てきた言葉のように感じられました。
健康面談では、言葉そのものに目が向きがちです。
「問題ありません」という答えも、その通りであることは多いです。
ただ、その前後にある表情や間、言葉にするまでの時間の中に、その人の状態がにじむことがあります。
もちろん、感じた違和感がすべて何かのサインとは限りません。
それでも、すぐに結論づけるのではなく、「少し気にしておこう」と心の片隅に置いておくようにしています。
次に会ったとき、その変化が続いているのか、それとも一時的なものだったのかが見えてくることもあるからです。
「間」を受け止めることも私の仕事の一部
働いていると、自分の不調に気づきにくいことがあります。
「このくらいは大丈夫」と思ってしまったり、忙しさの中で後回しにしてしまったり。
だからこそ、言葉になりきらない小さな違和感や、数秒の静けさに目を向けることには意味があるのだと思います。
目立つ変化ではなく、ほんのわずかな“いつもと違う”。
そして、ときには言葉になる前の「間」。
それを静かに受け止めておくことが、私たち保健師の仕事の一部なのかもしれません。
保健師さとみのプロフィール
担当連載「日々のすきまに、保健師のつぶやき」
行政保健師を経て、現在は産業保健師、もこすく相談員として働く。 誰かの体や心がちょっと疲れたとき、「話してよかった」と思ってもらえるような存在を目指して、日々社員の声に耳を傾けている。 やわらかく、話しかけやすい雰囲気が魅力のもこすく相談員。 自分自身も子育てや働き方に迷いながら過ごすひとりの社会人として、 等身大の視点でコラムを届けていく。
