Episode4【大人になってからの学び ~心に栄養を補給する「アート鑑賞」という休息時間~】
2026.08.03
私は元陸上自衛隊の看護官として、多くの隊員の健康を守る仕事に携わってきました。そして現在は、働く人の心と体を健やかに保つサポートをしています。 そんな私が声を大にしてお伝えしたいのは、「心にも栄養補給が必要」ということです。
どれほど優秀な人でも、燃料切れでは走り続けられません。企業にとって健康経営が戦略なら、働く人にとって休息は戦略的な投資なのです。 私にとって、その最高の補給基地が「美術館」です。
学生時代、美術の成績はごく普通。正直に言えば、絵画に特別な興味があったわけではありません。
ところが社会人になり、時間に追われ、責任を背負い、毎日が”任務”のようになってから、美術館の静けさが心に染みるようになりました。
「何もしない」が、一番難しい時代
私たちは毎日、判断の連続です。
メール、チャット、会議、電話、トラブル対応……。
気づけば頭の中は常にフル回転。交感神経はアクセル全開です。
だからこそ休日くらいは、「効率」という言葉を忘れてみませんか。
美術館には、タイパもKPIもありません。
一枚の絵の前で10分立ち止まっても、誰にも注意されません。
「あの空は、なぜこんな色なんだろう。」
「この画家は何を伝えたかったのだろう。」
そんな正解のない問いを楽しむ時間は、凝り固まった思考をゆっくりほぐしてくれます。
実はこの「ぼーっとする力」は、創造性やレジリエンスを育てる大切な時間でもあるのです。
大人だからこそ、知る喜びがある
私が必ず読むのが作品のキャプションです。
作品が描かれた時代背景や画家の人生を知ると、一枚の絵がまるで小説のように語り始めます。
「そんな出来事があったのか。」
「この時代を生きたから、この色になったんだ。」
仕事とは直接関係ない知識かもしれません。
でも、人の心は”役に立つこと”だけでは豊かになりません。
教養は、人生の引き出しを増やしてくれます。
看護の仕事もまた、人を理解する仕事です。
芸術に触れることは、人間理解を深める学びでもあると感じています。
私の必須装備は「音声ガイド」
元自衛官の私にも、この「アート鑑賞での学び」という任務に欠かせない装備があります。
それが音声ガイドです。
イヤホンを耳につけると、外の世界が少し遠ざかります。
通知も会話も雑音も消え、作品だけに集中できる時間が始まります。
私はこれを「心のヘルメット」と呼んでいます。
情報があふれる時代だからこそ、一つの世界に没入する時間は最高のメンタルメンテナンスになります。
最後のお楽しみは、小さなお土産
展示を見終えたら、必ずショップに立ち寄ります。
お気に入りのポストカードやマグカップ、図録……。
「また増えたね」と家族に笑われることもありますが、それもまた楽しみの一つです。
自宅に飾っている小さなアートグッズを見るたび、美術館で過ごした穏やかな時間を思い出します。
それは、忙しい毎日の中で心を守る”小さな防波堤”になっています。
おわりに
私の仕事は、人を支える仕事です。
だからこそ、自身にも「心の栄養補給」が必要です。
健康とは、病気でないことではありません。
明日も笑顔で働ける心と体があること。
そして、その積み重ねこそが企業の力になります。
「健康とは企業戦略の根幹なり。」
これは企業へのメッセージであると同時に、一人ひとりの働く人へのエールでもあります。
「最近、みんな少し疲れているかな。」
そう感じたら、「週末は好きな場所で心を充電してきませんか」と声をかけるだけでも十分です。
休養は、決して怠けることではありません。
プロフェッショナルが長く活躍するための、大切な任務です。
忙しい毎日だからこそ、ときにはアートという静かな世界へ。
心にたっぷり栄養を補給して、また笑顔で職場へ戻ってこられるのです。
「明日も元気に働くために、今日、心にも栄養を。健康とは企業戦略の根幹なり。」
看護師みほのプロフィール
担当連載「健康とは、企業戦力の根幹なり」
元・陸上自衛隊看護官。過酷環境下での医療支援や災害派遣を経て、プロスポーツチームや臨時医療施設での統括看護も経験。 現在は企業の健康管理室に所属し、体調やメンタルの“潜伏リスク”に目を光らせながら、社員のコンディションを全方位から支えている。 どんな話にも動じず、冷静に状況を見極めてくれる相談員で、必要なときには的確な一手を差し出す、頼れる存在。 信条は「健康とは、企業戦力の根幹なり」。
