健康経営優良法人とは?取得のメリットと準備の流れ
2026.10.28
「健康経営優良法人という言葉は聞いたことがあるものの、どのような制度なのか分からない」「認定を受けるには、何から始めればよいのだろう」悩んでいませんか。
健康経営優良法人は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、優れた取り組みを行っている法人を認定する制度です。認定を受けるには、健康診断を実施するだけでなく、経営者による方針の表明や健康課題の把握、具体的な取り組み、効果検証などが求められます。
この記事では、健康経営優良法人認定制度の概要や取得するメリット、認定に向けた準備の流れについて解説します。
健康経営優良法人とは
健康経営優良法人とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、健康づくりに関する優れた取り組みを行っている法人を認定する制度です。
経済産業省が制度を設計し、日本健康会議が認定しています。健康経営に取り組む法人を「見える化」し、従業員や求職者、取引先、金融機関などから評価される環境を整えることを目的としています。
健康経営とは、健康診断や福利厚生を充実させることだけではありません。従業員の健康を経営上の重要な資源と捉え、心身ともに働きやすい環境を整えることで、従業員の活力や生産性、組織全体の力を高めていく取り組みです。
例えば、次のような取り組みが健康経営に含まれます。
- 定期健康診断の受診を促す
- 健康診断後の再検査や受診を支援する
- ストレスチェックを実施する
- 長時間労働を防止する
- メンタルヘルス相談窓口を設置する
- 運動や食生活の改善を支援する
- 喫煙対策を進める
- 感染症予防に取り組む
- 女性特有の健康課題について理解を促す
- 治療と仕事を両立できる環境を整える
認定は一度取得すれば継続するものではなく、認定期間は原則として約1年間です。認定を維持するには、毎年申請し、取り組みを継続・改善する必要があります。
健康経営優良法人認定制度の種類
健康経営優良法人認定制度には、大規模法人部門と中小規模法人部門の2部門があります。どちらの部門に該当するかは、業種や従業員数などによって決まります。単純に従業員数だけで判断するのではなく、その年度の申請区分を確認する必要があります。
大規模法人部門では「健康経営度調査」へ回答し、認定要件を満たした法人が健康経営優良法人として認定されます。そのうち、特に優れた取り組みを行う上位法人には「ホワイト500」の冠が付加されます。
中小規模法人部門では、認定申請書へ取り組み状況を記載して申請します。上位法人には「ブライト500」や「ネクストブライト1000」の冠が付加されます。
なお、健康経営優良法人と似た制度に「健康経営銘柄」があります。
健康経営銘柄は、東京証券取引所に上場している企業の中から、健康経営に優れた企業を選定する制度です。すべての法人が対象となる健康経営優良法人とは、対象や選定方法が異なります。
中小企業や非上場企業が健康経営に取り組む場合は、基本的に健康経営優良法人の認定を目指すことになります。
健康経営優良法人を取得するメリット
健康経営優良法人の認定を受けることは、社外へのアピールだけでなく、社内の健康課題を整理するきっかけにもなります。
企業の信頼性を伝えられる
認定を受けた法人は、「健康経営優良法人」の認定ロゴマークを、ホームページや会社案内、採用資料、名刺などに使用できます。従業員の健康を重視していることを社外へ分かりやすく示せるため、取引先や金融機関、地域社会からの信頼につながる可能性があります。
ただし、認定を受けたことだけで、自動的に企業評価や売上が上がるわけではありません。認定取得のために実施した具体的な取り組みや成果も併せて発信することが大切です。
採用活動でアピールできる
求職者にとって、働きやすさや健康への配慮は、就職先を選ぶ際の判断材料の一つです。
健康経営優良法人の認定を受けていれば、従業員の健康管理や職場環境の改善に取り組んでいる企業であることを、客観的な形で伝えられます。特に、知名度だけでは大企業と競いにくい中小企業にとって、自社の働きやすさを伝える材料になるでしょう。
ただし、認定ロゴを掲載するだけでは、実際の働き方までは伝わりません。残業時間の削減、相談窓口の設置、有給休暇を取得しやすい環境づくりなど、具体的な取り組みを採用ページや求人票で紹介すると効果的です。
従業員の健康課題を把握できる
認定申請に向けて準備を進めると、健康診断の受診率や再検査の受診状況、休職者数、残業時間、ストレスチェックの結果などを確認することになります。これまで担当者の感覚だけで捉えていた健康課題を、数値で把握するきっかけになるでしょう。例えば、健康診断の受診率は高くても再検査を受けていない従業員が多い場合は、受診勧奨の方法や勤務時間内に受診できる仕組みを見直す必要があります。
健康経営優良法人の認定基準を、自社の健康管理体制を確認するチェックリストとして活用できます。
従業員の定着や生産性向上につながる可能性がある
心身の不調を早めに発見し、適切な支援につなげられる環境を整えることは、休職や離職の予防につながります。また、出勤していても心身の不調によって十分な能力を発揮できない「プレゼンティーイズム」への対策も、健康経営の重要な視点です。
長時間労働の削減や職場環境の改善、相談体制の整備などを進めることで、従業員が安心して働きやすくなり、組織全体の活力や生産性が高まる可能性があります。
ただし、健康経営の効果は、認定を取得しただけで現れるものではありません。自社の課題に合った取り組みを継続し、効果を確認することが必要です。
自治体や金融機関の優遇制度を利用できる場合がある
自治体や金融機関などでは、健康経営優良法人に対するインセンティブを設けていることがあります。
具体的には、次のような制度です。
- 融資における金利の優遇
- 信用保証料の優遇
- 補助金審査における加点
- 公共調達における加点
- 自治体による表彰や広報支援
利用できる制度や条件は、地域や金融機関、申請年度によって異なります。
また、健康経営優良法人の認定を受ければ、すべての補助金や融資で優遇されるわけではありません。利用したい制度がある場合は、各自治体や金融機関の最新情報を確認しましょう。
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もこすく相談所に問い合わせる健康経営優良法人の主な認定要件
健康経営優良法人の認定要件は、大規模法人部門と中小規模法人部門で異なります。また、認定基準は毎年見直されるため、申請年度の認定要件を確認する必要があります。
認定基準は、主に次のような項目で構成されています。
経営理念・方針
経営者が、従業員の健康保持・増進に取り組む方針を明文化し、社内外へ発信しているかを確認します。
中小規模法人部門では、加入している健康保険者や自治体などが実施する「健康宣言事業」への参加が、原則として申請前に必要です。健康宣言事業が実施されていない場合は、自治体が実施する事業への参加や、自社独自の健康宣言によって代替できることがあります。
組織体制
健康経営を進める責任者や担当者を定め、必要に応じて産業医や保健師、健康保険者などと連携しているかを確認します。経営者が方針を示すだけで、実務を担当する人が決まっていなければ、継続的な取り組みにはつながりません。
誰が健康診断の受診勧奨やデータの集計、施策の実施、効果検証を担当するのかを明確にする必要があります。
制度・施策の実行
従業員の健康課題を把握し、その課題に対応する施策を実施しているかを確認します。
主な項目には、次のようなものがあります。
- 定期健康診断の受診率向上
- 健康診断後の受診勧奨
- ストレスチェックの実施
- 長時間労働への対応
- メンタルヘルス不調の予防
- 運動機会の増進
- 食生活の改善
- 喫煙対策
- 感染症予防
- 女性の健康保持・増進
- 治療と仕事の両立支援
- コミュニケーションの活性化
すべての施策を一度に実施すればよいわけではありません。自社の健康課題に合った取り組みを選び、実際に従業員が利用できる形で運用することが大切です。
評価・改善
実施した取り組みについて、参加率や健康診断結果、従業員アンケートなどを用いて効果を確認します。
例えば、運動習慣を身につけるためのイベントを実施した場合は、開催したことだけで終わらせず、参加人数や継続率、参加者の反応などを確認します。
期待した効果が得られなかった場合は、実施方法や周知方法を見直し、次年度の計画へ反映させます。
法令遵守・リスクマネジメント
労働安全衛生法をはじめとする関係法令を守り、従業員の健康情報を適切に管理していることも重要な要件です。
健康診断を実施していない、必要な産業医を選任していない、長時間労働者への面接指導体制が整っていないなど、法令上必要な対応ができていない場合は、健康経営の施策よりも先に改善する必要があります。
健康経営優良法人を取得するまでの準備
健康経営優良法人の申請書を提出する前に、現在の健康管理体制を確認し、不足している取り組みを整える必要があります。
1.申請する部門と認定要件を確認する
まず、自社が大規模法人部門と中小規模法人部門のどちらに該当するかを確認します。
業種や従業員数によって申請区分が異なるため、健康経営優良法人認定事務局が公表する、その年度の申請区分を確認しましょう。
併せて、申請期間や申請料、認定要件、提出方法も確認します。
2027認定の申請料は、大規模法人部門が1件につき8万8,000円(税込み)、中小規模法人部門が1件につき1万6,500円(税込み)です。申請料やスケジュールは変更される可能性があるため、申請時には最新情報を確認してください。
2.健康宣言を行う
中小規模法人部門へ申請する場合は、原則として事前に健康宣言事業へ参加します。協会けんぽや健康保険組合に加入している企業は、加入先の保険者が実施している健康宣言事業を確認しましょう。
健康宣言では、経営者が従業員の健康づくりに取り組むことを明確にし、社内外へ発信します。単に宣言書を提出するだけでなく、なぜ健康経営に取り組むのか、どのような会社を目指すのかを従業員へ説明することが大切です。
3.自社の現状と健康課題を把握する
次に、自社の健康管理に関する現状を確認します。
確認する項目の例は次のとおりです。
- 定期健康診断の受診率
- 再検査や精密検査の受診状況
- 有所見者の割合
- ストレスチェックの受検率や集団分析結果
- 時間外労働の状況
- 有給休暇の取得状況
- 休職者や離職者の状況
- 従業員から寄せられた相談内容
- 運動、食事、睡眠、喫煙などの生活習慣
- 育児や介護、治療との両立状況
健康診断結果などの個人情報は、必要な範囲を超えて閲覧・利用してはいけません。組織の課題を把握する場合は、個人が特定されない形で集計・分析します。
4.目標と実施計画を決める
現状分析で把握した課題をもとに、健康経営の目標と取り組み内容を決めます。例えば、健康診断後の再受診率が低い場合は、受診勧奨の実施や勤務時間内に受診できる制度を検討します。メンタルヘルスに関する相談が増えている場合は、管理職研修や外部相談窓口の導入が考えられるでしょう。
目標は、「健康意識を高める」といった抽象的な内容だけでなく、数値で確認できる形にすると効果を評価しやすくなります。
ただし、健康診断結果の数値は短期間で改善しないこともあります。受診率や施策への参加率など、取り組みの進み具合を測る指標も併せて設定しましょう。
5.取り組みを実施して記録を残す
計画に沿って施策を実施し、実施日や対象者、参加人数、周知方法などを記録します。
申請時には、実施した取り組みを確認できる資料の保存が求められます。
例えば、次のような資料です。
- 健康宣言を掲載したホームページや社内文書
- 経営会議や衛生委員会の議事録
- 従業員へ配信したメール
- 研修資料や参加者名簿
- 相談窓口を案内した社内資料
- 健康診断の受診勧奨記録
- 施策の実施報告書
- 従業員アンケートの集計結果
認定申請書へ記載するためだけに、後から取り組みを整理しようとすると、根拠資料が残っていないことがあります。施策を実施した時点で記録を残す仕組みを整えましょう。
6.効果を確認して改善する
取り組みを実施した後は、設定した目標や指標をもとに効果を確認します。
参加者が少なかった場合は、従業員のニーズに合っていなかったのか、実施時間や周知方法に問題があったのかを検討します。
健康経営は、認定申請をゴールとするものではありません。現状把握、計画、実施、評価、改善を繰り返し、取り組みを定着させることが重要です。
7.申請書を提出する
準備が整ったら、認定申請書または健康経営度調査票を作成し、専用サイトから提出します。
中小規模法人部門では認定申請書、大規模法人部門では健康経営度調査票を使用します。
回答内容に誤りがないか、保存すべき資料がそろっているかを確認してから申請しましょう。申請期間は年度ごとに決まっているため、締切直前ではなく、余裕を持って準備する必要があります。
健康経営は認定取得後も継続することが大切
健康経営優良法人の認定を受けると、従業員の健康を重視する企業であることを社内外へ伝えられます。採用活動や企業イメージの向上に役立つだけでなく、自社の健康課題や労務管理体制を見直すきっかけにもなるでしょう。
ただし、申請項目を満たすことだけを目的にすると、施策が形式的になり、従業員に十分活用されない可能性があります。
まずは健康診断の受診状況や労働時間、メンタルヘルスに関する相談状況などを確認し、自社に必要な取り組みを考えることが大切です。実施後は効果を確認し、翌年度の計画へ反映させましょう。
もこすく相談所では、保健師や看護師などの専門職による健康相談、メンタルヘルス相談、外部相談窓口など、企業の健康経営を支えるサービスを提供しています。
「健康経営に取り組みたいが、何から始めればよいか分からない」「社内だけでは従業員の健康支援まで手が回らない」とお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
参考:
経済産業省「健康経営優良法人認定制度」
ACTION!健康経営「中小規模法人部門の申請」
ACTION!健康経営「大規模法人部門の申請」
この記事の要点
- 健康経営優良法人は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、優れた取り組みを行う法人を認定する制度。
- 認定制度には、大規模法人部門と中小規模法人部門がある。
- 認定を受けると、企業の信頼性や採用活動におけるアピールにつながる可能性がある。
- 認定に向けて、健康宣言、健康課題の把握、目標設定、施策の実施、効果検証などを行う。
- 認定取得を目的にするのではなく、自社の課題に合った健康支援を継続することが重要。
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