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産業医面談は義務?目的やメリット、対象者などを徹底解説!

2025.08.29

産業医面談は義務?目的やメリット、対象者などを徹底解説!

産業医面談は、企業の安全配慮義務を果たす上で非常に重要です。しかし、法律が絡んでいることもあり、「どんな時に面談が必要なの?」「誰が対象になるの?」といった疑問を持つ人事・総務担当者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、労働安全衛生法で定められた産業医面談の目的やメリット、対象者について徹底解説します。中でも多くの方が疑問を持ちやすい、義務化されている面談、安全配慮義務として推奨されている面談に分けてご紹介します。
産業医面談について詳しく知りたい人事・総務担当者の方は、ぜひご一読ください。

産業医面談の目的とメリット

「産業医面談」とは、事業場で働く従業員の心身の健康維持・増進のため、医師である産業医が実施する個別の面談です。労働者の健康管理は企業にとって重要な課題です。特に近年は、メンタルヘルス不調や長時間労働による健康問題が社会的に注目されています。そのような状況下において、従業員が安心して働き続けられる環境を整備し、企業の健全な運営を支えることに直結する産業医面談は、極めて重要な役割を担っています。

産業医面談の目的は、単に健康状態を確認するだけでなく、従業員が抱える健康上の課題や職場環境に関する悩みなどを専門的な視点から把握し、適切なアドバイスやサポートを提供することです。企業側は、産業医からの意見を参考に、従業員の健康状態に応じた就業上の配慮や職場環境の改善を図ることで、安全配慮義務を履行し、健康経営の推進につなげることができます。

産業医面談は、従業員と企業双方にとって多大なメリットをもたらします。従業員と企業のそれぞれにどんなメリットがあるのか、具体的にご紹介します。

対象 産業医面談がもたらすメリット
従業員に対して • 健康問題の早期発見と対応
• 心身の健康維持・増進、健康リテラシーの向上
• 安心して働ける環境の確保
• プライバシーが配慮された環境での健康相談の実施
企業に対して • 安全配慮義務の履行
• 労働災害・疾病の予防
• 生産性の向上と休職・離職率の低下
• 法的義務の遵守
• 健康経営の推進
• 職場環境の改善
 
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義務?推奨?産業医面談の種類と主な対象者

産業医面談の中には、労働安全衛生法によって実施が義務付けられているものと、義務付けられてはいないものの推奨されているものがあります。人事・総務担当者が適切に対応するためには、これらの違いを正確に理解する必要があります。ここでは、実施が義務づけられているものと、推奨されているものに分けて、産業医面談の種類と主な対象者をご紹介します。

1.実施が義務づけられている産業医面談

長時間労働者に対する面談

労働安全衛生法第66条の8に基づき、事業者は長時間労働を行った従業員に対し、産業医による面接指導を実施する義務があります。 2019年4月の法改正にともない、面接指導を行う対象者の選定基準が変更されました。

具体的な対象者は以下の通りです。

対象者 面接指導が必要となる条件
労働者
(裁量労働制、管理監督者含む)
  • ・月80時間を超えて時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接指導を申し出た者
研究開発業務従事者
  • ・月100時間を超えて時間外・休日労働を行った者
  • ・月80時間越の時間外・休日労働を行い、疲労蓄積があり面接指導を申し出た者
高度プロフェッショナル制度適用者 ・1週間当たりの健康管理時間が40時間を超え、その合計が月に100時間を超えた者

ただし、健康への配慮が必要な場合は、80時間未満であっても面接指導の対象とすることが望ましいとされています。

この面談の主な目的は、長時間労働による健康障害のリスクを評価し、適切な対応を講じることです。産業医は以下の点を確認します。

  • 現在の健康状態(身体的・精神的な状態)
  • 疲労の蓄積状況:
  • 勤務状況、長時間労働の有無や原因・背景
  • 生活習慣

面談後、産業医は事業者に意見書を提出し、就業場所の変更、作業内容の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数減少など、就業上の措置や指導について意見を述べます。

2.面談の機会を設けることが義務づけられている産業医面談

ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員に対する面接指導

労働安全衛生法第66条の10に基づくストレスチェック制度が実施された場合において、「高ストレス」と判定された従業員には、産業医をはじめとする医師による面接指導を実施する機会を設けることが義務付けられています。この面接指導は、該当する従業員が希望する場合にのみ、行われます。

面接指導の目的は、高ストレスの原因を特定し、従業員の健康状態を詳細に評価することです。この面接指導において、産業医は以下のことを行います。

  • ストレスの原因(仕事内容、人間関係、プライベートなど)の特定
  • 心身の健康状態の確認
  • セルフケアのアドバイス
  • 必要に応じて専門医療機関への受診勧奨
  • 職場環境改善に関する意見の聴取

面談後、産業医は事業者に対して意見書を提出し、就業上の措置(労働時間の短縮、業務内容の変更など)や職場環境の改善について助言を行います。

3.安全配慮義務として行うことが推奨されている産業医面談

健康診断結果に基づく面接指導

労働安全衛生法第66条の7に基づき、事業者は健康診断の結果、特定の項目に異常の所見があり、かつ医師による面接指導が必要と判断された従業員が面接指導を希望した場合に、産業医面談を行います。
この面談の目的は、健康診断の結果に基づいて従業員の健康状態をさらに詳しく評価し、生活習慣の改善指導や、必要に応じた専門医療機関への受診勧奨を行うことです。産業医は以下の点について指導・助言を行います。

  • 健康診断結果の詳細な説明
  • 生活習慣(食事、運動、喫煙、飲酒など)の状況確認と改善指導
  • 疾病の予防や早期発見に関する情報提供
  • 就業上の配慮が必要かどうかの判断

面談後、就業上の配慮が必要な場合は、産業医は事業者に対し、従業員の健康保持に必要な措置について意見を述べます。

休職や復職時における産業医面談

従業員が病気や怪我で休職する際や、休職から復職する際には、産業医面談が重要な役割を果たします。法的義務ではありませんが、安全配慮義務の一環として、多くの企業で実施が推奨されています。

休職時の面談

休職に入る前や休職中に、産業医が従業員の状況を確認することがあります。休職の必要性を判断する、休職中の過ごし方について助言する、今後の復職に向けた見通しを立てることなどが目的として挙げられます。

復職時の面談

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」などでも示されている通り、休職していた従業員が職場に復帰する際には、産業医面談が行われることがあります。産業医は以下の点を評価し、安全な職場復帰を支援します。

  • 主治医の診断書の確認
  • 現在の心身の状態
  • 職場復帰への準備状況
  • 職場環境への適応の可能性
  • 就業上の配慮(時短勤務、業務内容の調整など)の必要性
  • 労働者の職場復帰に対する意思

産業医の意見は、従業員の復職可否や復職後の就業上の配慮を決定する上で、非常に重要な判断材料となります。

従業員から健康相談を依頼された場合の産業医面談

その他にも、従業員が自らの健康について不安を感じたり、相談したいことがある場合に、産業医が面談に応じるケースがあります。法的義務ではありませんが、従業員の健康管理やメンタルヘルス対策において非常に重要な役割を担います。

相談内容の例
  • 身体の不調(疲労感、頭痛、腰痛など)
  • 精神的な不調(不安、抑うつ、ストレスなど)
  • 生活習慣に関する悩み(睡眠不足、食生活の乱れなど)
  • 人間関係の悩みやハラスメントに関する相談
  • 健康診断の結果に関する疑問

従業員が気軽に産業医に相談できる体制を整えることは、康問題の早期発見・早期対応につながり、従業員の心身の健康維持に大きく貢献します。人事・総務担当者は、従業員に産業医の存在と相談窓口を周知し、利用しやすい環境を整備することが求められます。

その他、安全配慮義務として推奨されるケース

労働安全衛生法で義務付けられているケース以外にも、企業が従業員の健康状態を把握し、適切なサポートを提供するために、産業医面談を推奨すべきケースがいくつかあります。これらは、企業の安全配慮義務の観点からも重要です。

推奨される主なケースは以下の通りです。

推奨ケース 具体的な状況例 面談の目的
職場環境の変化 部署異動、業務内容の大幅な変更、新しい人間関係の構築など、従業員に大きな負担がかかる可能性のある状況。 環境変化への適応状況を確認し、必要に応じて心理的なサポートや就業上の配慮を検討する。
ハラスメント被害 パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントなどの被害を受けた従業員。 心身の健康状態を評価し、精神的なケアや適切な対応策について助言する。
同僚の休職・退職 身近な同僚が健康問題を理由に休職・退職した場合、周囲の従業員にも心理的な影響が及ぶ可能性がある。 不安やストレスを抱えていないか確認し、必要に応じてサポートを提供する。
健康状態の悪化兆候 長時間労働には該当しないが、明らかに疲労が見られる、集中力低下、ミスが増加するなど、健康状態の悪化が疑われる場合。 従業員の健康状態を早期に把握し、重症化する前に適切な介入を行う。
復職後の経過観察 復職後、一定期間が経過した従業員に対し、再発防止や安定した就業継続のためのフォローアップ。 復職後の状態変化を確認し、就業上の配慮が適切に機能しているか、新たな問題がないかを確認する。

これらのケースで産業医面談を積極的に活用することは、従業員の健康維持だけでなく、企業の生産性向上やリスクマネジメントにも繋がります。人事・総務担当者は、従業員の状況を日頃から把握し、必要に応じて産業医面談を促すことが重要です。

まとめ

本記事では、産業医面談が法的義務となるケースや対象となる従業員について詳しく解説しました。長時間労働者、高ストレス者、健康診断の異常所見がある従業員に対して産業医面談の機会を設けることは、企業が労働安全衛生法に基づく義務を果たす上で不可欠です。また、安全配慮義務の観点から推奨される面談もあります。 産業医面談の義務と対象を正しく理解し、適切に実施することは、法令違反のリスク回避はもちろん、従業員の健康を守り、健全な職場環境を築くための第一歩となります。

産業医面談に関するご不明点や具体的な対応でお困りの場合は、いつでももこすく相談所にご相談ください。専門家が貴社をサポートいたします。

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この記事の要点

  • 産業医面談は企業の法的義務であり、安全配慮義務の重要な一環である。
  • 面談の主な目的は、従業員の心身の健康維持・増進と、企業による適切な就業上の配慮にある。
  • 産業医面談は、健康問題の早期発見・対応、労働災害予防、生産性向上につながる。
  • 健康診断で異常所見があり希望した従業員への面談は安全配慮義務として推奨される。
  • 休職・復職時や従業員からの健康相談は、直接的な義務ではないが安全配慮義務として推奨される。
  • 職場環境の変化やハラスメント被害など、従業員の健康悪化兆候がある場合も面談を推奨すべきである。
  • 産業医面談は、法令遵守と従業員が安心して働ける職場環境構築のために不可欠な取り組みである。
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