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長時間労働は何時間から?基準の考え方と企業が対応すべきラインを解説

2026.04.15

長時間労働は何時間から?基準の考え方と企業が対応すべきラインを解説

「長時間労働で会社が対策をしなければならないのは何時間から?」「残業は何時間を超えると危険なの?」——人事・総務の現場では、こうした疑問を持つ場面があるでしょう。
結論から言えば、「ここからが長時間労働」という明確な時間数はありませんが、企業として対策すべき基準の目安時間はあります。この記事では、「長時間労働は何時間からなのか」という問いに対して、現場でよく使われる目安とその意味を整理しながら、企業が対応を考えるべきラインをわかりやすく解説します。

長時間労働は何時間から?

「長時間労働」という言葉は日常的に使われますが、実は労働基準法に「長時間労働は○時間以上」と明確に定義された条文はありません。法律で定められているのは、原則の労働時間と、それを超える時間外労働、そして時間外労働に対する上限規制です。
ここで整理しておきたいのは、「法律で違法になるライン」と「企業が長時間労働対策として動き出すべきライン」は必ずしも同じではない、という点です。法律は最低限守るべき基準を定めているものであり、健康管理の観点では、より早い段階からの対応が重要になります。まずは法律上の考え方を整理し、そのうえで実務上の目安を見ていきましょう。

まず、原則の労働時間は「1日8時間・週40時間」と定められています。そして、これを超える場合はすべて「時間外労働」にあたります。
時間外労働を従業員に求める場合には、企業は事前に「36協定(サブロク協定)」を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。36協定を結んだ場合でも、時間外労働には上限があり、原則として「月45時間・年360時間以内が上限」とされています。
“原則”とされているのには理由があり、臨時的な特別の事情(繁忙期や臨時対応など)がある場合に限り、「特別条項付き36協定」を締結することで、一定の範囲まで上限を引き上げることが認められています。ただし、その場合でも、次のような制限が設けられています。

  • 時間外労働の年間合計は、720時間以内
  • 時間外労働と休日労働を合算した労働時間は、1か月あたり100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、直近2ヶ月から6ヶ月までのいずれの平均を見ても、1ヶ月あたり80時間以内
  • 月45時間を超える時間外労働が認められるのは、1年のうち最大6ヶ月まで

これらの基準を超えて労働させた場合は、企業に罰則が科される可能性があり、明確に「違法な長時間労働」にあたります。
以上を踏まえると、少なくとも、月45時間を超える時間外労働が続いている場合や、特別条項の水準に近づいている、または超えている場合は、法令遵守の観点だけでなく、健康管理の観点からも、長時間労働への対策や管理が必要な段階といえます。

厚生労働省「時間外労働の上限規制:わかりやすい解説」

長時間労働対策で覚えておきたい3つの目安時間

時間外労働や「特別条項付き36協定」の上限として出てくる「月45時間」「月80時間」「月100時間」という3つの数字は、従業員の健康リスクを考えたときに、企業として長時間労働対策に取り組む際の目安になります。というのも、それぞれには次のような意味があるからです。

月45時間超:長時間労働の初期ライン

時間外労働が月45時間を超えると、疲労の蓄積や睡眠不足が起こりやすくなり、集中力の低下や体調の変化が出やすくなるとされています。
この段階は、直ちに重篤な健康障害が起こる水準ではありませんが、「働き方の質」を点検すべきラインです。業務量や人員体制、特定の社員への負担集中がないかを確認し、早めに是正を図ることが重要になります。

月80時間前後:健康障害のリスクが高い段階

時間外・休日労働が月80時間前後を超えると、脳・心臓疾患や精神障害へのリスクが高まります。これは、厚生労働省が定める労災認定基準において、長時間労働と健康障害との関連が強い目安として示されている水準です。時間外労働が月80時間を超える月が2~6ヶ月間続く状態は、一般に「過労死ライン」と呼ばれ、早急な対策が必要です。この段階では、本人の自覚に関わらず、医学的な視点を入れた健康管理が不可欠になり、医師による面接指導や就業上の措置を前提とした対応が求められます。

月100時間超:極めて危険な水準

1ヶ月で100時間を超える時間外・休日労働も、「過労死ライン」と呼ばれており、健康障害の発症リスクが極めて高い水準です。この場合は、緊急性の高い介入が必要となり、労働時間の是正、業務内容の抜本的見直し、場合によっては就業制限や休業も含めた対応が検討されます。

かつては、36協定を結べば実質的に上限なく時間外労働が可能な状態が続き、長時間労働が常態化しやすい状況がありましたが、その結果として、脳・心臓疾患や精神障害への影響が指摘され、労災認定基準や医師による面接指導制度が整備されるようになってきています。
こうした流れを踏まえ働き方改革関連法により、時間外労働の上限が労働基準法上、罰則付きで明確化されるようになりました。「月45時間」「月80時間」「月100時間」といった水準は、単なる数字の区切りではなく、健康リスクなどを背景に設定された基準として理解しておく必要があります。

長時間労働対策:企業は「何時間から」対応を始めるべきか

企業実務において重要なのは、「法的上限に達してから動く」のではなく、時間数の段階に応じて対応の強度を変えていくことです。ここでは、前章で示した「45時間・80時間・100時間」という目安に沿って、企業が取るべき対応の考え方を整理します。

月45時間を超えたら:長時間労働を「点検」する段階

時間外労働が月45時間を超え始めた段階は、長時間労働が常態化しつつあるサインと捉えるべき水準です。この時点では、すぐに医療介入が必要というわけではありませんが、働き方や業務構造を点検するタイミングに入っています。
この段階で企業が行いたいのは、たとえば次のような確認です。

  • 特定の社員に業務が集中していないか
  • 一時的な繁忙なのか、慢性的な人員不足なのか
  • 業務量や締切設定が適正か
  • 長時間労働が当たり前の職場風土になっていないか

あわせて、本人の疲労感や睡眠状況、体調の変化にも目を向け、必要に応じて業務の再配分や優先順位の整理、上司による声かけなどを行います。

月80時間前後に近づいたら:医療職の関与を前提にした「介入」の段階

時間外・休日労働が月80時間前後に達している場合は、健康障害のリスクが明確に高まる水準です。この段階では、単なる業務調整ではなく、医学的視点を入れた健康管理が前提になります。
法律では、一般労働者の場合、時間外・休日労働が1ヶ月あたり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる場合で、本人から申し出があれば、企業は産業医面談を実施することを義務付けています。これは労働安全衛生法に基づく制度で、長時間労働による健康障害を未然に防ぐことを目的としたものです。産業医面談では、以下のことが確認されます。

  • 本人の健康状態・疲労状況の把握
  • 労働時間や業務内容の具体的な是正
  • 就業上の配慮(残業制限、配置調整など)の検討

産業医面談は本人からの申し出が前提とされていますが、「本人が大丈夫と言っていれば対策をとる必要がない」ということではなく、企業側は客観的に健康リスクが高い水準に入っているという認識をもって対応することが重要です。
この段階では、人事・上司判断だけで抱え込まず、産業医や保健師など医療職の関与を前提にした対応体制を取ることが、重症化を防ぐうえで重要になります。

月100時間を超えたら:緊急性の高い「是正・保護」の段階

1ヶ月で100時間を超える時間外・休日労働は、健康障害の発症リスクが極めて高い水準です。この段階は、「長時間労働対策」という枠を超え、健康障害を防ぐための緊急対応が必要な状態と捉える必要があります。
この場合、検討すべき対応には以下が含まれます。

  • 速やかな労働時間の是正
  • 業務内容・業務量の抜本的な見直し
  • 配置転換や業務制限の検討
  • 医療機関受診の勧奨
  • 必要に応じた休業や就業制限

この状態での「少し様子を見る」「一時的だから」といった判断は、重大な健康リスクにつながりかねません。企業には、従業員の健康確保を最優先にした判断が求められます。

※参考:「長時間労働者の健康ガイド」

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数字に表れない長時間労働にも注意する

時間外労働時間別にそのリスクと対応策を紹介しましたが、勤怠上の数字だけでは把握できない長時間労働が存在することも、理解しておく必要があります。
たとえば、サービス残業、持ち帰り業務、テレワークによる労働時間の不透明化などにより、記録上は問題がなくても、実態としては長時間労働になっているケースもあります。
まずは、勤務状況の実態を把握するように努め、次の情報もあわせて確認することが重要です。

  • 体調不良や欠勤・遅刻が増えていないか
  • 相談件数やメンタル不調の訴えが増えていないか
  • 明らかに疲弊している社員がいないか

また、従業員の健康リスクを考える際には、長時間労働はもちろん、過重労働になっていないかにも、着目する必要があります。過重労働とは、心身に過度な負担がかかっている状態を意味します。たとえば、労働時間がそれほど長くなくても、強い心理的負荷のある業務や身体的負担の多い業務、勤務間のインターバルが短い業務などでは、過重労働の状態になることがあります。逆に、時間が長くても業務負荷が比較的軽く、十分な休息が取れている場合には、健康影響が小さいケースもあります。
つまり、「何時間から長時間労働か」という視点と同時に、「その働き方が過重労働になっていないか」という視点を持つことも、健康障害の予防には欠かせません。

参考:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準の改正概要」

長時間労働対策が手遅れになる前に!企業で起こりがちな誤解を知ろう

長時間労働対策が遅れてしまう原因の一つに、企業側の誤解があります。よくある誤解は次のようなものです。

誤解①「80時間を超えなければ安全」

「過労死ラインが80時間だから、それ未満なら問題ない」と捉えられがちですが、これは正確ではありません。健康リスクは月45時間を超えた段階から徐々に高まり始めるとされており、80時間はあくまで「特にリスクが高い水準」です。80時間に達していなくても、睡眠不足や強いストレスが重なれば、体調不良やメンタルヘルス不調が生じることは十分にあります。

誤解②「本人が平気と言っているから大丈夫」

長時間労働が続くと、疲労が慢性化し、自身の不調に気づきにくくなることがあります。また、「迷惑をかけたくない」「評価を下げたくない」といった理由から、本音を言えないケースも少なくありません。 本人の自己申告だけに頼らず、労働時間・業務負荷・表情や行動の変化などを総合的に見る視点が重要です。

誤解③「数字さえ管理していれば十分」

勤怠管理は長時間労働対策の基礎ですが、それだけで健康管理が十分とは言えません。同じ労働時間でも、業務内容や心理的負荷、勤務形態によって影響は大きく異なります。 数字とあわせて、体調の変化や相談内容、職場の雰囲気なども含めて状況を把握することが、長時間労働の早期発見につながります。

誤解④「問題が起きてから対応すればよい」

体調不良が顕在化してから対応する場合、すでに休職や長期療養が必要な状態に進行していることも少なくありません。長時間労働対策は、トラブル対応ではなく予防として取り組むことが重要です。

長時間労働による健康影響は徐々に進行することが多く、数値だけ、自己申告だけで判断すると、対応が遅れるリスクがあります。

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まとめ

長時間労働に「ここからが危険」という一本の線はありません。実務では、45時間・80時間・100時間といった水準を段階的なサインとして捉え、早めに働き方を見直し、必要に応じて医療職の視点を入れていくことが重要です。

もこすく相談所では、従業員向け相談窓口サービスや産業医のご紹介を通じて、長時間労働に悩む企業の健康管理体制づくりを支援しています。「何時間から対応すべきか」「社内だけで判断してよいのか」と迷う場面があれば、医療職が関わる外部相談窓口を活用することも一つの選択肢です。長時間労働による健康リスクを未然に防ぐために、ぜひ一度もこすく相談所にご相談ください。

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記事の要点

  • 原則の労働時間(1日8時間・週40時間)を超える働き方は時間外労働にあたり、36協定の締結・届出が前提となる
  • 原則は「月45時間・年360時間」までで、特別条項を設ける場合も「年720時間以内」「複数月平均80時間以内(休日労働含む)」「単月100時間未満(休日労働含む)」「月45時間超は年6ヶ月まで」などの制限がある
  • 企業の対応は「違法かどうか」だけで判断せず、健康管理の観点から早めに始めることが重要
  • 時間外・休日労働時間の月45時間超は長時間労働の初期ラインで、業務の偏りや人員体制、締切設定、職場風土などを点検し、負担の集中を早期に是正する段階
  • 時間外・休日労働時間の月45時間超は月80時間前後は健康障害のリスクが高い水準で、医学的視点を入れた介入が必要になり、条件を満たす場合は本人の申し出により産業医面談(労働安全衛生法に基づく)が義務となる
  • 時間外・休日労働時間の月100時間超は健康リスクが非常に高く、早急な対策が必要
  • 勤怠上の数字だけでは把握できない長時間労働(サービス残業、持ち帰り業務、テレワーク等)にも注意が必要

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