女性の離職防止に役立つ福利厚生制度とは 取り組みの例や導入時のポイント、注意点を解説
2025.10.29
産休・育休制度をはじめ、法定の福利厚生制度を導入しているにもかかわらず、職場環境や待遇を理由に離職する女性従業員が後を絶たない……、そんなお悩みはありませんか。このような企業では、現状の制度だけでは、女性従業員が抱えるライフイベントや健康問題、キャリアへのきめ細やかなサポートが足りていない可能性があります。こうした問題の解決策の一つが、法定外の福利厚生制度の活用です。そこでこの記事では、法定外の福利厚生制度を導入して、女性従業員の離職防止に役立てるための方法を解説します。具体的な取り組みの例も紹介するため、ぜひ参考にしてみてください。
法定外の福利厚生制度が優秀な女性の確保・定着に役立つ理由
法定外の福利厚生制度を戦略的に活用することは、女性従業員の確保や定着率向上に役立ちます。
その理由は大きく2つあります。
1.ライフステージの変化によって起こる働きにくさにアプローチできる
女性従業員が離職を考える最も大きな要因は、結婚、出産、育児、そして介護といったライフステージの変化と、それによる仕事と生活の両立の難しさです。法定の制度はありますが、実際にはそれだけでカバーしきれるわけではありません。その足りない部分に企業が踏み込むことで、女性のキャリア継続を後押しすることができます。
2.採用活動で他社と差別化できる
福利厚生制度の充実は、採用市場においても魅力的なアピールポイントになります。特に、手厚い両立支援や健康サポートは、企業が「多様な人材を大切にし、働く環境を整えている」という明確なメッセージにもなり、結果として求職者からの信頼を得ることにつながります。 また、福利厚生が充実していることで、特にワークライフバランスや健康を重視する優秀な女性からの応募が増加します。これにより、企業はより多くの選択肢の中から、自社が必要とする優秀な人材を長期的に確保しやすくなります。つまり、法定外の福利厚生制度は、採用競争を勝ち抜くための不可欠な武器にもなる、ということです。
女性従業員の確保・定着に役立つ福利厚生制度の例
法定外の福利厚生制度は多岐にわたりますが、女性従業員の離職理由の上位を占める「両立の難しさ」「健康不安」「経済的な負担」「キャリアの不安」の解消に直結する制度を厳選して紹介します。
1.育児・介護の両立支援系
| 分野 | 制度の具体例 | 定着への効果・特徴 |
|---|---|---|
| 育児サポート | 社内託児所の設置・提携託児所優待利用 | 復職後の保育園探しを大幅に軽減し、離職を防ぐ。 |
| ベビーシッター利用費用の補助 | 突発的な病児保育や残業時の対応など、緊急時の育児負担を経済的にサポート。 | |
| 認可外保育園料の補助 | 認可保育園に入れない場合の経済的な負担の軽減 | |
| キッズ在宅制度(在宅勤務の柔軟化) | 子どもの急な発熱時などに、有給休暇を使わず在宅勤務できる制度。 | |
| 妊娠・妊活支援 | 不妊治療休暇(有給) | 治療と仕事の両立を可能にし、キャリアを諦めることなく妊活に取り組める。 |
| 卵子凍結費用の補助 | 将来の出産を見据えた選択肢を提供し、キャリア形成の不安を軽減。 | |
| 産前産後通院休暇(有給) | 妊婦健診を安心して受けられるよう、法定外で休暇を付与。 | |
| 介護サポート | 介護休業期間・回数の上乗せ | 法定の休業期間を超えて家族の介護に専念できるよう支援し、介護離職を防ぐ。 |
| 介護サービス費用の補助 | 介護の経済的・物理的負担を軽減し、社員の定着に貢献。 |
2.健康・ウェルビーイング支援系
| 分野 | 制度の具体例 | 定着への効果・特徴 |
|---|---|---|
| 女性の健康 | 婦人科検診費用(乳がん・子宮頸がん)の全額補助 | 女性特有の疾病の早期発見・予防をサポート。健康不安による離職を防ぐ。 |
| 生理休暇・特別休暇(エフ休など)の有給化 | 月経随伴症状や体調不良時も気兼ねなく休養でき、安心して働ける環境を提供する。 | |
| 低用量ピル処方費用補助 | 生理痛やPMS(月経前症候群)による不調を緩和し、業務パフォーマンスの安定をサポート。 | |
| メンタルケア | 専門家による女性向け健康相談窓口 | 妊娠、更年期、人間関係など、女性特有のデリケートな悩みを相談できる体制を整備。 |
| リラックス・リフレッシュ制度 | マッサージ費用補助やヨガ教室の法人割引など、ストレス緩和と心身のリフレッシュをサポート。 |
3.経済的・キャリア形成支援系
| 分野 | 制度の具体例 | 定着への効果・特徴 |
|---|---|---|
| 経済的支援 | 家賃補助・住宅手当の充実 | 実質的な手取りを増やし、特に若手や地方在住者の経済的な不満を解消。 |
| 社員食堂・置き型社食サービスの提供 | 毎日の食費負担を軽減し、栄養バランスの取れた健康的な食事をサポート。 | |
| キャリア支援 | 資格取得・外部研修費用の全額補助 | 女性従業員のスキルアップ意欲に応え、成長の機会を提供。キャリア中断への不安を解消。 |
| メンター・コーチング制度の導入 | 経験豊富な先輩や外部専門家によるキャリア相談を通じて、長期的なキャリア展望を描きやすくする。 | |
| カフェテリアプラン | 多様なニーズを持つ従業員に対し、付与されたポイント内で様々なサービス(旅行、健康、育児、自己啓発など)を自由に選択可能にし、公平性を高める。 |
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もこすく相談所に問い合わせる福利厚生制度を導入する際のポイント
せっかくコストをかけて制度を導入しても、従業員のニーズに合わず、利用率が低ければ意味がありません。特に女性従業員の離職防止という目的を達成するためには、以下のポイントを押さえておくことが不可欠です。
(1)従業員のニーズを把握する
- ● アンケート・ヒアリングの実施:導入前に、従業員の年齢層、既婚/未婚、育児・介護の有無、キャリア志向などを踏まえたアンケートを実施し、「どの制度があれば働き続けられるか」という真のニーズを定量・定性両面から把握します。
- ● 女性特有の潜在ニーズの深掘り:制度の利用には抵抗があるデリケートな分野(例:不妊治療、更年期の不調)について、匿名性の高い相談窓口などを通じて潜在的なニーズを掘り起こし、制度設計に反映させることが重要です。
(2)公平性を確保し、従業員間に不公平感を生じさせない
- ● 全従業員対象の原則:福利厚生費として経費計上するため、そして従業員満足度を維持するために、正社員、契約社員、パートタイマーなどすべての雇用形態、役職の従業員が平等に利用できる制度を設計します。
- ● ニーズの多様性への対応:育児支援など特定の層にしか恩恵がない制度ばかりにならないよう、カフェテリアプランを導入するなど、幅広い選択肢を提供し、未婚者や子育てを終えた層にも恩恵が行き渡る仕組みを作ります。
(3)導入目的を明確にし、定量的な目標を設定する
- ● 目的とKPIの設定:「何のために導入するのか」(例:女性従業員の定着率を5%向上させる、育児休業からの復帰率を100%にする)という目的を明確にし、利用率や従業員満足度を測るKPIを設定します。目的が曖昧だと、コストばかりがかさむ「ムダな施策」になりかねません。
福利厚生制度を運用するときの注意点
(1)周知を徹底し、「利用しやすい風土」を醸成する
- ● 積極的な情報発信:制度があっても知られていなければ意味がありません。社内ポータル、社内報、入社時研修、管理職研修などを通じて、制度の内容、利用方法を繰り返し周知します。
- ● 心理的障壁の除去:育児休暇や短時間勤務など、「利用すると評価が下がるのではないか」という不安を払拭するため、経営層や管理職が率先して制度利用を奨励する姿勢を示し、利用者のロールモデルを積極的に紹介します。
(2)コストと管理負担の増加を予測する
- ● 費用対効果の検証:導入コスト、ランニングコスト、そしてそれを管理する人事・総務部門の人的・時間的コストを総合的に予測します。
- ● アウトソーシングの検討:制度が多岐にわたる場合、管理業務が煩雑化し、担当者の負担が増大します。福利厚生のアウトソーシング(代行サービス)を活用することで、事務負担を軽減し、従業員に質の高いサービスを提供できます。
(3)定期的な見直しと改善を継続する
- ● 効果測定と見直し:導入後も定期的に利用率や従業員へのアンケートを実施し、効果の低い制度は改善または廃止を検討します。従業員のライフステージや社会情勢の変化に合わせ、制度を長期的な視点で柔軟に対応させることが重要です。
まとめ
法定外の福利厚生制度を整備することは、単なる「プラスアルファの待遇」ではなく、女性をはじめとする多様な人材が安心して長く働ける環境をつくるための戦略的人事施策です。ライフステージや健康状態、家庭の事情など、従業員一人ひとりの状況に寄り添う制度があることで、「この会社なら働き続けられる」という信頼が生まれます。 一方で、制度をつくるだけでは十分ではありません。現場の声を反映し、利用しやすい雰囲気づくりや効果検証を継続することが、制度の価値を最大化する鍵となります。法定外福利厚生は、採用力・定着率・生産性のすべてを底上げする「未来への投資」。企業文化の一部として根付かせることができれば、結果的に女性の離職率低下だけでなく、組織全体のエンゲージメント向上へとつながっていくでしょう。
もこすく相談所では、女性の働きやすい環境づくりに向けた取り組みをサポートしています。女性の健康や両立支援に詳しい助産師・保健師が企業の実情に合わせてアドバイスを行い、女性従業員のニーズに合った施策のご提案が可能です。職場での女性支援策にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の要点
- 法定外福利厚生は、女性従業員の離職防止と定着促進に効果的な戦略的人事施策である。
- 育児・介護・妊活・健康支援など、ライフステージに応じた制度が女性のキャリア継続を支える。
- 充実した法定外福利厚生は、採用市場における企業の競争力とブランド価値を高める。
- 制度設計には従業員の実態把握と公平性の確保、明確な目的設定が欠かせない。
- 制度は導入後の周知と見直しを重ね、利用しやすい職場風土の中で定着させることが重要である。
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