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女性のキャリアアップが難しいのはなぜ?人事・総務が知っておきたい“現実”と、支援を始めるための第一歩

2025.12.08

女性のキャリアアップが難しいのはなぜ?人事・総務が知っておきたい“現実”と、支援を始めるための第一歩

女性活躍推進が叫ばれる中でも、管理職やリーダー職に就く女性は依然として少数です。「希望者がいないから」「本人の意欲の問題」と捉えられがちですが、現実には、組織における評価の仕組みや働き方、女性に対する周囲からの期待など、女性がキャリアを築くうえでの難しさや課題が潜んでいます。 まずは、その現実を正しく理解し、自社の状況を振り返ることが出発点です。本記事では、女性のキャリアアップが難しい理由を整理し、企業が最初に取り組むべきことについて解説します。

女性のキャリアアップが進まない“現場のリアル”

厚生労働省の「令和5年度 雇用均等基本調査」によれば、民間企業における女性管理職比率はわずか12.7%。役職別に見ると、係長相当職で19.5%、課長相当職で12.0%、部長相当職では7.9%にとどまり、役職が上がるほど女性の割合は急減しています。また、女性総合職の4割、一般職の5割が「マミートラック (出産や育児を機に、思うようなキャリアが形成できなくなること)を経験している」という調査結果も出ており、女性のキャリアアップの難しさが問題となっています。

かつてに比べて女性活躍のための制度や風土が少しずつ整ってきたとはいえ、 女性のキャリアアップが進まない現実が依然として存在します。その理由として、大きく次の4つのことが挙げられます。

1.昇進が負担増に感じられる働き方の構造

多くの職場では、管理職になると、長時間労働・重い責任・柔軟性のない働き方が求められる、もしくは、そうした働き方ができる人が管理職となっているのが現実です。「昇進=家庭や自分の時間を犠牲にしなければならない」というイメージが持たれやすい職場では、昇進に対する価値を見出しにくくなります。一般的に、男性に比べ、女性は家事や育児・介護などに時間や労力を費やさなければならないケースが多く、そんな中で責任の重い職に就いて労働時間を捻出することは、現実的ではない選択肢に感じられてしまいます。

2.身近なロールモデルが少ない

キャリア形成において、身近にロールモデルとなる存在がいると、「自分が3年後、5年後、10年後に、どんな働き方をするのか」「仕事において、リーダー的な職務に就くことができるのか」を想像しやすくなり、具体的な目標や行動計画を立てやすくなります。しかし実際には、様々なライフステージを経て就業を継続している女性や女性管理職が少ない職場が多い現実があります。身近にロールモデルとなる人が少ないと、若手社員も自分の将来像を描きにくくなります。

3.挑戦意欲を下げる評価や登用の不透明さ

「どんなスキルが求められるのか」「何をすれば評価されるのか」が明確でない場合や、個人へのフィードバックが少ない職場では、自分の成果や貢献、成長を認識しづらくなります。また、そのような職場での昇進は“序列”や、“選ばれた人だけの世界”と映りやすくなります。特に、成果重視の制度設計が構築されておらず、上司から好かれている人が昇進できたり、就業時間が長いことだけが評価されたりするような職場では、不公平感を感じる従業員が増えてしまい、管理職への挑戦意欲も低下しやすくなります。

4.善意の配慮でキャリア形成の機会が奪われることも

上司や人事担当者の中には、「この職種や役職は、ある程度の無理が利く人でないと任せられない」「家庭がある人には無理をさせられない」といった“配慮”の意識が働くことがあり、その結果、配属(採用)や昇進機会が見送られてしまうケースもあります。たとえ善意の判断であっても、それが結果的に女性のキャリア形成の機会を奪うことがあります。

女性のキャリアアップを進めるためには、「個人の意欲の問題」と片づける前に、「キャリアアップにつながる経験ができている」「成長を感じる」「貢献できている」と自覚できる機会や、意欲を育む環境が必要です。

女性のキャリアアップ環境を作る第一歩は、自社の今を知ることから

女性のキャリアアップを進めるうえで最初に必要なのは、自社の現状を正確に把握することです。制度を整える前に、いま何が課題なのかを明らかにしなければ、対策は的を外れてしまいます。そこで、最初の一歩として取り組みたい現状把握のポイントを紹介します。

1.データで現状を“見える化”する

まず取り組みたいのは、数字から見た現状の把握です。女性社員の割合、役職ごとの登用率、評価結果の傾向、退職率などを整理してみましょう。とくに重要なのは、「管理職候補層」の女性が、どの段階で減っているのかを確認することです。採用時には男女比がほぼ同じでも、主任・係長・課長へと上がる過程で急減していないか、昇進プロセスを可視化することで、キャリア形成の“見えない壁”が浮かび上がります。 また、制度利用率にも注目しましょう。育児・介護休業、短時間勤務、テレワークなどの制度があるだけでなく、「実際にどれだけ使われているか」「利用後にキャリアが続いているか」を確認することが重要です。制度の利用率が低い場合、その背景には「使いにくい雰囲気」や「どう使っていいかわからない」という運用上の障壁が潜んでいる可能性があります。

2.社員の声を“聴く”仕組みをつくる

数字だけでは、個々の本音は見えてきません。アンケートや面談などを通じて、社員が何を感じているのかを直接聴くことが大切です。「昇進に関心はあるか」「キャリア形成に不安を感じる点は何か」など、率直な意見を拾う場を設けることで、見えない課題を発見できます。
また、回答を集計するだけでなく、男女・年代・職種ごとの違いを分析してみましょう。たとえば、キャリア形成への不安の原因として、30代の女性では「労働時間の制約」 を挙げる人が最も多いが、40代になると「評価基準が不明確」「上司との関係性」といった声が増えるなど、年代によって課題の性質は変化します。 「一律の対策」ではなく、キャリアの段階ごとに求められる支援を整理することが、現実的な施策につながります。

3.“意見を交わす場”を職場内に設ける

現状把握の目的は、数字を並べることではなく、気づきを共有することにあります。アンケートや面談で得た結果を、人事部門だけで抱え込まず、管理職層や現場の社員と一緒に考える場を設けましょう。「どんな働き方が必要か」「評価のどこに公平さや納得感を感じるか」を率直に話し合うことで、職場全体の意識を少しずつ変えていくことができます。 とくに、人事部門や管理者がデータと声の両方をもとに“現状を見せる”ことは、経営層への説得にも有効です。課題を数字とストーリーで可視化することが、次のアクションを生み出す第一歩になります。

「現状を知る」ことは、キャリア支援のための基礎と言えます。データを整理し、声を聴き、共有することが、キャリア形成に希望を持てる環境づくりの第一歩になります。

女性従業員もキャリアアップできる!3つの具体策

女性のキャリアアップ支援を本格的に進めるには、「制度を整える」だけでなく、「運用して定着させる」ことが不可欠です。登用数を増やすことをゴールにせず、社員が長く安心して成長できる仕組みをどう設計するか――。ここでは、企業が現実的に取り組みやすい3つの具体策を紹介します。

1.評価基準を見直す:成果と行動を分けて可視化する

■ 目的
評価の曖昧さをなくし、納得感を高める。

■ 取り組み例

  • 評価区分の見直し:「成果(何を達成したか)」と「行動(どう取り組んだか)」を分けて評価する。
  • 時間依存の項目を削除:「出社率」「勤務時間の長さ」など、長時間労働に依存する指標を撤廃する。
  • 行動評価の項目追加:「チームへの貢献」「後輩育成」「業務改善提案数」など公平に見える項目を入れる。
  • 二重チェック体制の導入:評価会議を設け、複数の上司と人事担当が確認する仕組みを整える。

■ 実行ポイント
成果だけでなく、成果を支える行動を評価軸に含めましょう。また、育児・介護など、制約のある社員も評価対象になることを可視化しましょう。

2.社内研修・OJTで“学ぶ場”を日常に組み込む

■ 目的:
昇進候補者層のスキル不足を防ぎ、学ぶ文化をつくる。

■ 取り組み例

  • 管理職研修を「登用後」ではなく、「登用前」に設定。候補者層にリーダーシップ研修を実施する。
  • 上司が部下に“ミニOJT”を任せる仕組みを導入(例:小規模プロジェクトの責任者をローテーション)。
  • オンライン研修を活用し参加しやすくする。
  • 社内イントラや社内のグループチャット上で「スキル共有チャンネル」を作り、短いTips形式で知識を交換。
  • チームの定例進行役を1か月交代制にする

■ 実行ポイント:
研修だけでなく「現場での経験」をどう増やすかを意識することが重要です。小さな実践の積み重ねがリーダーシップ育成につながります。

3.メンター制度とキャリア相談の仕組みを整える

■ 目的:
社員が孤立せず、安心してキャリアを語れる場をつくる。

■ 取り組み例:

  • 管理職や先輩社員から希望者を募り、若手社員と1対1でペアを組む「メンター制度」を導入。(月1回・30分でも十分)
  • メンターとの面談項目に「キャリアの悩み」「ワークライフバランス」「健康」「将来やってみたいこと」を含める。
  • メンターのフォロー体制として、人事が進捗を把握し、必要に応じて面談テーマを提供。
  • 外部相談窓口 を併用し、社内で話しづらい相談も受けられる環境を用意。

■ 実行ポイント:
キャリア相談を「特別な場」ではなく、定期的な対話として文化に根づかせること。一度きりの面談で終わらせず、継続的に関われる仕組みを人事がリードします。

この3つの取り組みは、いずれも大きなコストをかけずに始められるものです。評価・学び・相談という“成長を支える3本柱”を整えることで、女性だけでなく、ライフステージが変化しても働き続けたいすべての社員にとって、キャリアを諦めずに挑戦できる環境が生まれます。

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まとめ

女性のキャリアアップが進まない理由は、本人の意欲ではなく、「希望を持ちにくい環境」が職場のどこかに潜んでいることが多いものです。働き方・評価・文化――そのいずれかに小さな偏りがあるだけでも、社員の挑戦意欲は少しずつ削がれていきます。だからこそ、人事・総務が担う役割は大きいのです。

もこすく相談所では、働く人のキャリアと健康の両面から、組織づくりを支援しています。これまで企業において女性の両立支援を行ってきた助産師や保健師に加え、人材コンサルタントも在籍しており、職場環境の改善からキャリア支援制度の設計まで、専門的な視点でサポートが可能です。社員が安心してキャリアを築ける環境を整えたいとお考えの人事・総務の皆さまは、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の要点

  • 女性のキャリアアップが進まないのは「意欲の問題」ではなく「環境の問題」
  • 自社の現状を可視化し、データと社員の声から課題を特定することが第一歩
  • 評価・研修・メンター制度など、小さくても実行できる仕組みを地道に整える
  • 登用数よりも、「自分のキャリアを前向きに考えられる職場づくり」が本質
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