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なぜサービス残業はなくならない?“見えない労働”が企業にもたらすリスクと防止策

2025.12.25

なぜサービス残業はなくならない?“見えない労働”が企業にもたらすリスクと防止策

「定時を過ぎても仕事が終わらず、つい残って作業してしまう」「上司がまだ働いているから帰りづらい」──そんなサービス残業は、どの職場にも起こり得る問題です。サービス残業は本来、労働基準法で違法とされる行為ですが、制度や管理体制を整えても、現場ではいまだに“見えない労働”として続いてしまうケースが少なくありません。本記事では、サービス残業がなくならない背景や、企業・従業員が抱えるリスク、そして職場としてどう防止していけるのかを解説します。心身への影響や離職のリスクを防ぐためにも、今こそ職場の働き方を見直すヒントを一緒に考えていきましょう。

サービス残業とは?見えない労働の正体

「サービス残業」とは、労働者が実際に勤務しているにもかかわらず、残業代が支払われない状態を指します。法律上の明確な定義はありませんが、労働基準法第37条では「使用者は、法定労働時間を超えた労働に対して割増賃金を支払わなければならない」と定められています。つまり、会社の指揮命令下で行われる労働はすべて「労働時間」に該当し、たとえ“自主的に残っていた”としても、会社が業務を黙認していれば残業代の支払い義務が発生します。

しかし現実には、労働時間の申告や管理の仕方によって、「働いていたのに労働時間に含まれない」ケースが多発しています。たとえば、次のような状況です。

① 定時で退勤したことにして、実際には業務を続ける(虚偽報告)

「上司がまだ働いているから帰りづらい」「残業を申請すると評価が下がりそう」といった心理的圧力から、打刻上は退勤したことにして、実際には社内で業務を続けるケースです。 一見すると本人の自主的判断のように見えますが、上司や職場の雰囲気が背景にある場合、会社の黙認とみなされることがあります。 このようなタイムカードと実労働時間の乖離は、労働基準法上の重大な違反につながります。 特に、パソコンのログイン履歴や入退館データで勤務の事実が確認されれば、企業側が労働時間を把握していたと判断されることもあります。 管理職は「早く帰れ」と言うだけでなく、業務量や納期の調整を行う責任があることを意識する必要があります。

② 打刻システムで30分未満の残業を切り捨てる(端数処理)

「15分単位」「30分単位」で残業時間を丸める勤怠システムを導入している企業もありますが、実際に働いた時間を切り捨ててしまうと、未払い残業の原因になります。 たとえば1日20分の残業を切り捨て続けると、月20日勤務で6時間40分もの労働が記録上は存在しないことになります。 こうした処理は「細かい残業は自己管理で」といった職場慣習から生まれることもありますが、たとえ数分でも実際に働いた時間は労働時間としてカウントしなければなりません。 労働基準法では、使用者には労働時間を正確に把握する義務があり、端数処理を理由に残業代を支払わないことは違法とされます。 今後は、1分単位で労働時間を記録できるシステムを導入し、正確な勤怠管理を徹底することが求められます。

③ 始業前の掃除や準備、終業後の片付けが勤務時間外扱いになっている

飲食店や小売業、医療・介護、教育などの現場で多く見られるのが、始業前の準備や終業後の片付けが「勤務時間外」とされるケースです。 例えば、開店前の掃除・仕込み、レジ締めや報告書の作成などがそれにあたります。 これらは業務に必要な作業であり、使用者の指揮命令下で行われる限りすべて労働時間に該当します。 「準備だから」「自主的にやっている」として放置すると、本人の負担感が高まり、結果的に離職や労基署への通報につながるリスクもあります。 企業としては、こうした付随作業も含めて勤務時間を再設計し、業務設計そのものを見直すことが重要です。 始業前・終業後の作業が発生する業種ほど、職場単位でのタイムマネジメント改善が求められます。

これらのケースはいずれも、表面上は「本人の自主的な行動」や「職場の慣習」として見過ごされがちですが、実際には職場の構造や文化が生み出している問題です。 たとえば、残業を申告しづらい雰囲気や、評価制度がプレッシャーとなる環境では、従業員が自ら進んで長く働いているように見えても、実質的には会社の管理下にあるといえます。 そのため、会社がこうした働き方を黙認している場合、サービス残業として違法行為に該当する可能性があります。

サービス残業は「お金を払うかどうか」だけの問題ではなく、働く人の心理・職場風土・マネジメントの在り方が関係する構造的な課題です。 働き方改革が進む今こそ、表面化しにくい“見えない労働”を把握し、現場での運用や意識を見直すことが求められます。

サービス残業がなくならない3つの背景

サービス残業が法律で禁止されていることは多くの人が知っています。 それでも現場でなくならないのは、単に「ルールを守っていないから」ではなく、職場の構造や心理、文化に根づいた原因があるためです。 ここでは、サービス残業を生み出す代表的な3つの背景を整理しながら、問題の根底にある意識や環境を考えていきましょう。

① 責任感や評価への不安

多くの従業員は、「仕事を終わらせたい」「上司に迷惑をかけたくない」という責任感から、定時前や定時後に作業をしてしまいます。特に評価制度が成果主義である場合、「残業を申告しづらい」「定時で帰るとやる気がないと思われる」といった心理的圧力が働きやすくなります。こうして、本人の善意や努力が、結果的に“無償労働”を生み出す構造が起きます。

② 職場の同調圧力や「暗黙の了解」

「上司がまだ働いている」「同僚が帰らない」といった状況で、自分だけ帰ることに気まずさを感じる──こうした“空気”や“同調圧力”も、サービス残業を温存する大きな要因です。会社としては残業を禁止していても、現場では「実際には黙認されている」ことも多く、制度と実態の間にギャップが生じます。特に中間管理職が「自分の頃はもっと大変だった」と過去の働き方を基準にしてしまうと、職場全体に「残るのが当たり前」という風土が固定化されやすくなります。

③ 管理職の労務意識の欠如

サービス残業の背景には、管理側の問題もあります。労働時間の管理を形式的にしか行っていなかったり、残業申請を「上限を超えるから」と却下しておきながら、実際には業務を続けさせるといったケースです。これは、労働基準法上の「使用者の指揮命令下」に該当し、管理職自身が違法行為を助長している状態といえます。また、残業を減らすことばかりに意識が向き、業務量そのものの見直しや人員配置の改善が行われないことも、根本的な解決を妨げます。

こうした3つの要因は、単体で起こるというよりも、「責任感」×「同調圧力」×「管理不備」が重なり合うことで、サービス残業を「仕方ないこと」と感じさせてしまう構造を作っています。つまり、制度の整備だけでは不十分で、職場の意識と文化を変えていくことが、根本的な解決への第一歩なのです。

見えない労働がもたらす企業リスク

一見小さな「サービス残業」も、放置すれば組織全体に深刻な影響を及ぼします。 法令違反のリスクだけでなく、従業員の健康悪化や離職、企業イメージの低下など、見えない労働は企業の土台を揺るがす要因となります。 ここでは、サービス残業が企業にもたらす主なリスクを4つの観点から整理します。

① 労働基準法違反による行政処分・罰則のリスク

最も直接的なリスクは、労働基準法違反による是正勧告や罰則です。労働基準監督署は、匿名通報や従業員からの申告をきっかけに調査を行うことがあります。未払い残業が発覚した場合、企業には最大3年分の未払い賃金支払い義務が生じ、悪質性が高く是正勧告に従わない場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることもあります。さらに、企業名が公表されるケースもあり、コンプライアンス意識が問われる時代において大きな痛手となります。

② 従業員の健康被害・メンタル不調

サービス残業が続くことで、心身に不調をきたす従業員も少なくありません。長時間労働による過労死やうつ病などの問題は、社会的にも大きく取り上げられています。疲労が蓄積すると集中力が低下し、ミスや事故の発生率が上がるだけでなく、「職場への信頼」そのものが損なわれていくのです。また、管理職側も「部下が体調を崩して初めて異常に気づく」というケースが多く、結果的にチーム全体の生産性を下げてしまいます。

③ 離職率の上昇と採用難

サービス残業が常態化している職場では、「努力が報われない」「正当な評価が得られない」と感じる社員が増え、離職につながりやすくなります。特に若手層は転職市場での流動性が高く、残業体質の企業から離れていく傾向が顕著です。この流れは採用活動にも影響を及ぼし、求人サイトや口コミで「サービス残業が多い」「働きにくい職場」と評価されれば、応募数が減少し、採用コストの増加や人手不足を招く悪循環に陥ります。

④ 企業ブランド・社会的信頼の低下

現代では、企業の「働き方」に対する社会的な目が非常に厳しくなっています。働き方改革関連法に基づく取り組みが進む中で、サービス残業の温存は時代遅れな企業イメージを生みかねません。たとえ法令違反に至らなくても、「従業員を大切にしていない」「ブラック企業体質」と見なされるだけで、取引先や顧客からの信頼を失うリスクがあります。

つまり、サービス残業をなくすことは単なる「法令遵守」にとどまらず、企業の持続可能性(サステナビリティ)を守ることにも直結します。働く人の健康・モチベーション・定着率を守ることが、結果的に企業の競争力を高める最善の投資になるのです。

サービス残業をなくす職場づくりのヒント

サービス残業のリスクを理解しても、実際に「どうすれば減らせるのか」と悩む担当者は少なくありません。 法的な整備だけでは限界があり、現場レベルでの工夫と意識づけが欠かせます。 ここでは、企業が今日から取り組める実践的な対策と職場づくりのヒントを紹介します。 小さな改善の積み重ねが、社員の健康と組織の信頼を守る大きな一歩になります。

① 労働時間を見える化する仕組みをつくる

まず基本となるのは、労働時間を正確に把握することです。ICカードやPCログを活用した客観的な勤怠管理を導入すれば、「申告時間と実労働時間のずれ」が明確になります。勤務時間の把握を厳密に行うことで、「つい残ってしまう」「上司が帰るまで帰れない」といった曖昧な残業を減らせます。また、時間外労働が多い部署を可視化し、業務量の偏りや人員配置の見直しにつなげることも重要です。

② 管理職の労務意識を高める

管理職が労働時間管理の重要性を理解しない限り、制度は形だけのものになってしまいます。「残業を減らせ」と言うだけでなく、部下の業務負担を把握し、調整・優先順位づけを行う力が求められます。また、長時間労働を“努力”や“熱意”として評価するような人事文化も見直しが必要です。労務教育やマネジメント研修を通じて、「健康を守ることも成果の一部」と捉える意識改革を進めましょう.

③ 職場風土を変えるコミュニケーション

「上司が残っていると帰りづらい」「周りも頑張っているから」といった職場の空気を変えるには、日常のコミュニケーションが鍵です。例えば、上司が率先して定時退社を呼びかけたり、業務の優先順位を一緒に整理することで、残業しづらい雰囲気を和らげられます。また、月1回のミーティングで「残業が発生した原因」や「改善できそうな工夫」を話し合うなど、チーム全体で解決策を共有する仕組みを設けると効果的です。

④ 外部相談窓口を活用する

職場の中だけでは言いづらい悩みや不満を受け止めるには、社外の相談窓口の設置が有効です。従業員が匿名で相談できる仕組みがあれば、「不満をため込む」「黙って辞める」といったリスクを防げます。相談を通じて現場の声を集め、企業側が改善につなげていく──この循環が、サービス残業を根本から減らすためのカギになります。

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社外健康相談窓口が果たす役割と、長時間労働対策への効果

長時間労働やサービス残業を防ぐうえで重要なのは、従業員が「声を上げられる環境」を整えることです。 しかし現実には、社内の上司や人事に直接相談することにためらいを感じる人が多く、問題が表面化しづらいのが実情です。 こうした“沈黙の職場”を防ぐ仕組みとして注目されているのが、社外健康相談窓口(外部相談体制)です。

外部に設けられた相談窓口では、従業員が匿名で専門職に悩みを打ち明けることができます。 単なるメンタル相談にとどまらず、業務量の偏り・人間関係のストレス・評価制度への不安など、社内では拾いづらい実情を早期に把握することが可能です。 これにより、企業は現場で起きている課題を「定量的・客観的」に認識し、長時間労働の原因を組織レベルで分析できるようになります。

さらに、社外相談窓口は従業員の健康リスクを未然に防ぐだけでなく、人事・総務が実務的な改善策を打ちやすくするデータの窓口としても機能します。 相談傾向の分析を通じて、どの部署で疲弊やストレスが高いのかを可視化でき、結果的に労働時間や業務量の見直しにもつながります。 つまり、これは単なる「ケア」ではなく、組織マネジメントの一環としてのリスクマネジメントなのです。

また、外部の専門職(保健師・心理相談員など)が対応することで、従業員は安心して本音を話すことができ、企業も「公正な第三者視点」で職場課題を振り返ることができます。 このような双方向のサイクルが、職場内では言えない問題を早期に発見・是正する仕組みを作り出します。 長時間労働を防ぐには、上からの指示や管理だけでなく、現場の声を拾い上げるボトムアップの仕組みが欠かせません。

最近では、こうした外部相談体制を提供する民間サービスも増えています。 社内に専門部署を持たない中小企業でも、外部機関を活用することで、従業員の健康保持と労務リスク管理を同時に実現できる時代になっています。 外部相談窓口は、もはや福利厚生の一環ではなく、長時間労働を未然に防ぐ企業インフラとして定着しつつあるのです。

 

まとめ

サービス残業は、単なる「お金の問題」ではなく、職場の仕組みや意識のゆがみが生み出す構造的な課題です。定時後のちょっとした作業や「みんなが残っているから」という空気の中で、知らず知らずのうちに働きすぎてしまう。それが当たり前になれば、従業員の健康だけでなく、企業の信頼や生産性にも大きな影響を及ぼします。

一方で、現場の多くの人が「自分の職場では仕方ない」「改善を求めても変わらない」と感じているのも現実です。だからこそ大切なのは、問題を個人の我慢で終わらせず、相談できる環境を整えること。制度を見直すだけでなく、現場の声を聞き取り、働き方を一緒に考えていく姿勢が求められます。

もこすく相談所では、こうした“働き方のゆがみ”を見直すサポートを行っています。従業員が安心して相談できる外部窓口を設けることで、現場の課題を早期に把握し、職場全体の改善へとつなげていくことが可能です。サービス残業のない職場づくりは、社員の健康を守るだけでなく、「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりにもつながります。

見えない残業をなくすことは、企業の責任であり、従業員を守る大切な一歩です。今日からできる小さな改善を積み重ね、安心して働ける職場を一緒に育てていきましょう。

この記事の要点

  • サービス残業とは、実際に勤務しているにもかかわらず残業代が支払われない状態を指し、虚偽の退勤打刻や残業時間の端数処理、始業前後の準備や片付けが勤務時間外扱いになるケースなどが含まれる
  • サービス残業がなくならない背景には、仕事を終わらせたいという責任感や評価への不安、職場の同調圧力や暗黙の了解、管理職の労務意識の欠如といった要因がある
  • 見えない労働を放置すると、労働基準法違反による行政処分や未払い賃金請求だけでなく、従業員の健康被害やメンタル不調、離職率の上昇につながる
  • サービス残業の常態化は採用難や企業ブランド・社会的信頼の低下を招き、組織の持続性を損なうリスクとなる
  • サービス残業をなくすためには、労働時間を正確に把握する仕組みづくり、管理職による業務量調整、相談しやすい環境の整備を通じて、職場全体で働き方を見直すことが重要である
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